はじめに

1 令和3年の行方不明者数は前年よりも増加

 警察庁の統計調査「令和3年中における行方不明者の状況」によると、令和3年は、統計の残る昭和31年以降で最少となった令和2年の77,022人に次いで少ない、79,218人前年比2,196人増加)となっています。 
 
 男女別では、男性が50,289人女性が28,929人と男性の割合の方が高くなっています。また、年齢層別では、20歳代の行方不明者数が最も多く、次いで10代、80代、70代と若年者の次に高齢者の行方不明者数が多くなっています。
 
 原因・動機別では、疾病関係が23,308人と最も多く、このうち認知症又はその疑いによるものは17,636人、疾病関係に次いで、家庭関係の12,415人、事業・職業関係の8,814人の順で多くなっています。

2 令和3年中に所在確認等がなされた行方不明者

 令和3年中に所在確認等がなされた行方不明者(確認をした年次以前に受理した届出分を含む)は78,024人となっています。
 また、令和3年中に所在確認等がなされた78,024人のうち、警察又は届出人等において所在が確認された者は65,657人、死亡が確認された者が3,613人、その他(届出が取り下げられたもの)が8,754人となっています。

3 行方不明者とその後の法律関係

 警察庁の上記統計調査上は、所在確認等がされた者のうち、死亡が確認されたのは全体の5%弱となっています。 
 家族や親族に行方不明者がいる場合、その周囲の法律関係はどうなるのでしょうか。長期間にわたり行方不明の状態が続いた場合に検討する制度として、失踪宣告制度認定死亡制度があります。本稿では、これらの制度の意義や効果などについて紹介致します。

失踪宣告制度の意義と趣旨

 失踪宣告制度とは、不在者(従来の住所又は居所を去った者で、容易に帰ってくる見込みのない者のこと)の生死不明の状態が継続した場合に、その者の死亡を擬制し、身分上・財産上の法律関係を確定させる制度のことをいいます(民法30条)。

 失踪宣告制度の趣旨は、一言でいえば、不在者とその関係者の法律関係の安定にあります。たとえば、不在者の生死不明の状態が長期間にわたり継続している場合、いつまでも相続が開始されなかったり、残された配偶者が再婚できないといった問題を防ぐことに意義があります。

失踪宣告制度の種類と類似の制度

1 普通失踪

⑴ 意義

 普通失踪とは、不在者の生死が7年間明らかでない場合に、利害関係人又は検察官が失踪宣告を家庭裁判所に申立て失踪宣告の審判を受けて死亡したものとみなされる制度のことをいいます(民法30条1項)。

 利害関係人とは、不在者の配偶者や相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など失踪宣告を求めることについて法律上の利害関係を有する者をいいます。

⑵ 申立先と申立費用

 申立先は、不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所となり、申立てに必要な費用は、収入印紙800円分連絡用の郵便切手(申立て先の家庭裁判所へご確認ください。)、官報公告料4816円(失踪に関する届出の催告3053円及び失踪宣告1763円の合計額。裁判所の指示後納めることになります。)となります。

⑶ 要件と効果

 普通失踪を申し立てるためには、不在者の生死が7年間明らかでないことが要件となります。死亡したものとみなされる失踪宣告の効果(死亡擬制)は、不在者本人又は利害関係人が失踪宣告の申し立てをして取消の審判が行われない限り効果は失われません

 失踪宣告の取消しの審判が行われると、取消の効果は遡及し、失踪宣告に基づく死亡の効果は初めから生じなかったことになります(これを取消の遡及効といいます。)。

⑷ 取消の効果の例外

 失踪宣告の取消の遡及効には、2つの例外があり、そのうち1つは、失踪宣告後に不在者の財産を取得した者は、失踪宣告の取り消し後、現に利益を受けている限度で不在者(だった者)に財産を返還すればよいとされていることです。
 もう1つは、失踪宣告の取消前に、失踪宣告が事実に反することを知らない(善意)でなされた行為は有効とされることです。

2 特別失踪

⑴ 意義

 特別失踪とは、冬山登山の遭難者や船舶の沈没などに遭遇した者の生死が不明な場合に、利害関係人が失踪宣告を家庭裁判所に申し立て、失踪宣告の審判を受けて死亡したものとみなされる制度のことをいいます(民法30条2項)。

⑵ 要件と効果

 特別失踪を申し立てるためには、不在者が冬山登山の遭難や船舶の沈没など死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後1年間不在者の行方が分からないことが要件となります。
 特別失踪の失踪宣告の効果や取消の遡及効があることは、普通失踪の場合と同様です。

認定死亡制度

 失踪宣告と同じように、不在者を死亡しているものと扱う制度として認定死亡制度というものがあります。

 認定死亡とは、水難や火災等によって不在者が死亡したことが確実であると認められる場合に、調査を行った官公署が死亡の認定をして死亡地の市町村長に死亡報告をし、戸籍に死亡の記載がされる制度のことをいいます。
 
 認定死亡は、行政手続上の便宜的な取扱いとなるため、不在者の生存が判明すると認定死亡の効果は当然に効力を失うことになります。

失踪宣告制度と認定死亡制度のいずれを利用するか

1 失踪宣告の効果は強力

 失踪宣告の審判が確定すると、不在者の死亡が「擬制」されます。
 「擬制」とは、死亡したものとみなし、反証は許されないことをいいます。 
 そのため、のちに生存していることが判明しても、家裁による失踪宣告取消の審判がない限り、死亡したものとして扱われ続けることになります。

 他方、認定死亡制度は、死亡が推定されるに過ぎず、反証が許されることはもちろん、不在者の生存が判明した時点で認定死亡の効果は失われることになります。

2 法律関係の安定を優先

 このように、失踪宣告の効果が認定死亡の効果よりも強力なのは、不在者にかかわる法律関係の安定を図る点にあるからです。不在者が死亡していることを前提に一度発生した法律関係が取り消され、覆されるとその後の法律関係が錯綜し混乱を招きます。そのため、法律関係の安定を優先し、認定死亡制度よりも失踪宣告制度の利用を検討するべきです。

 まずは、普通失踪や特別失踪の要件を検討し、これらの要件を満たしている場合には失踪宣告の申立てを行うことになります。そして、失踪宣告の要件を満たしていないが、認定死亡の要件を満たしている場合にはじめて認定死亡の申請を検討することになります。

失踪宣告の申立てに関するご相談は弁護士へ

 失踪宣告制度や認定死亡制度による効果は死亡と擬制される、又は推定されることは先に述べたとおりですが、不在者の死亡後にはその財産や権利関係について相続等の手続きが必要となります。
 
 また、失踪宣告の申立てをすることまで検討していない方でも、不在者にかかわる財産の管理や権利関係について放置するわけにもいかず、どのような措置・対策を執ればよいか迷われている方もいるかと思います。

 大切なご家族や親族の方が行方不明で、不在者の財産管理についてお困りの方は一度その対応や措置について弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。弁護士法人いかり法律事務所には、続問題や不在者の財産管理手続に詳しい弁護士が在籍していますので、まずは無料相談などをご利用の上、お気軽にご相談下さい。