事業の譲渡・株式売買

会社・事業を売る

会社や事業を売ることをご検討の際には,弁護士までご相談ください。
 

会社・事業を買う

将来の成長戦略として,新規事業に乗り出したい、或いは,既存事業のさらなる事業拡大を狙いたいという場面において,M&Aによって,シナジー効果を期待できる他の会社や事業を買収するという方法が活用されています。
 会社・事業を買収する1番のメリットは,時間をかけずに,既に軌道に乗っている会社や事業を即時に手にすることができる点にあります。これにより,技術やノウハウ,顧客や取引先,設備,人材などのビジネスの基盤を直ぐに取り込むことができるのです。ゼロから事業を立ち上げたりしようとすると,お金だけでなく時間が必要になりますし,途中で失敗するリスクもあります。企業や事業の買収は,日々ビジネス環境が変化する中でチャンスの時機を逃さずに事業を拡大する絶好の方法なのです。
  法律的には, 会社買収は株式譲渡契約,事業売却は事業譲渡契約という枠組みの中で実行していくことになります。
 買主側として一番重要なことは,買収対象企業の財務面及び法務面を中心としたリスク調査(デューデリジェンス)を徹底するということです。簿外債務や保証債務,公害問題,従業員や第三者とのトラブルや訴訟なども問題が隠れている場合があります。これらのリスクを洗い出して,買収に適しているか,回収するとしてその事業価値はいくらかを評価 (バリュエーション) して売主との交渉に当たる必要があります。
 そして,契約交渉ではしっかりとリスクヘッジをして,売主の負う表明保証責任の対象や範囲を明確に定めていく必要があります。また,旧経営陣にはしばらく経営に携わってもらうなど,買収後の企業統合を円滑に行うための工夫も必要になります。
 会社や事業の買収は大きな買い物である一方で,多くの場合,買収実行後の解除権は制限されますので,失敗はできません。
 リスクの調査(DD)には財務や法律の専門知識を必要としますのので,会計士や弁護士などの協力が不可欠です。
 そのため,会社や事業の買収をご検討の際には,弁護士までご相談ください。

M&Aとデューデリジェンス(DD)

 M&A(企業買収)を行う際に、買収対象企業の経営環境、事業内容などを調査し、財務面・法務面の問題点・リスク,財務状況・収益力について企業分析を行って精密調査を行うことをデュージェリジェンス(略して「DD」)といいます。
 このようなM&AにおけるDDは,主に買収対象企業の情報を持たない買手にとって重要なものとなり,買主からの依頼によって、公認会計士や監査法人、税理士、弁護士などが行います。
  DDは,その調査の視点・切り口によって多岐にわたり,財務,税務,法務,人事,IT,環境などの種類があります。M&A取引の状況に鑑み、必要なデューデリジェンスを取捨選択して行っていきます。
 主なものは,財務DDと法務DDです。
 財務DDは,監査法人や公認会計士が担当し,対象会社の財政状態、経営成績、資金繰りなどの財務状態について詳細に調査し,不正な取引や経理処理がないかを確認します。
 一方,法務DDは弁護士が担当し,その企業が締結した契約や取引等の事業に関係する権利、債権債務などについて、M&A取引に影響を与える法務上のリスクがないかを調査します。
 調査範囲は,会社組織・株式,関係会社,許認可,契約関係,資産・負債,知的財産権,人事・労務,訴訟・紛争,環境など広範囲に及びます。
 対象会社が従業員や第三者との間で重要な訴訟・紛争を抱えているケース,取引上の契約違反や他人の権利の侵害により、多額の損害賠償請求を受けているようなケースなどでは特に法務DDは欠かせません。また,法務DDを行うことではじめてこのような紛争が発見されるということもあるのです。
 DDには財務や法律の専門知識を必要としますのので,会計士や弁護士などの協力が不可欠です。
 そのため,会社や事業の買収をご検討の際には,弁護士までご相談ください。

対応弁護士

■弁護士碇啓太

福岡事業承継・M&Aセンターメンバー
福男県弁護士会中小企業法律支援センター副委員長

上記各組織の活動を通じて,事業承継やM&Aの分野に尽力し,地元中小企業を支援。
これまで解決に導いた案件数は随一であり,案件実績を通じて多くの知識や実務上のノウハウをもつ。

■弁護士園田真紀

経営学修士号の学位(MBA)を保有。大学や民間企業における法務部担当弁護士の経験があり,企業法務の分野での実績を有する。

事業承継に関する中小企業庁の対応及び資料

事業承継マニュアル

事業承継ガイドライン

事業承継ガイドラインについて

事業承継ガイドライン20問20答

M&A取引における表明保証責任について

1.表明保証とは

表明保証とは,契約の一方当事者が他方当事者に対して,当該契約の目的物等に関する所定の事実が,所定の時点でかつ正確である旨を表明し,保証するものをいいます。

その機能は,リスク分配機能と法律効果の要件となる機能があり,結果として契約当事者に対して情報提供をうながす等の一定の作用を有することになります。

表明保証の法的性質については,判例学説上確立した見解が示されている情況ではありませんが,瑕疵担保特約説と損害担保契約説とがあります。一般に,表明保証条項および保証条項は損害担保契約であると整理することが妥当とされており,請求者において十分なデューディリジェンスを行うことができない場合であっても対象事業に係ると特定の事項に関するリスクを適正に分配できる点で上記リスク分配機能とも整合的であるとされています。

2.表明保証条項の概観

表明保証については,契約書上別紙として,売主による表明保証と買主による表明保証とがそれぞれされるのが通例です。

売主による表明保証の条項としては,⑴売主に関する表明保証,⑵対象会社グループに関する表明保証とします。

⑴売主に関する表明保証としては,設立および存続,本契約の締結および履行,強制執行可能性,法令等との抵触の不存在,許認可等の取得,倒産手続等の不存在,反社会的勢力,株式に対する権利などの事項についてなされます。

⑵対象会社グループに関する表明保証としては,設立および存続,対象会社の株式等,子会社・関連会社等,計算書類,重要な変更の不存在,会計帳簿,法令等の遵守,不動産,知的財産権,動産,在庫,債権,資産,契約等,人事労務,年金,公租公課,保険,環境,紛争,関連当事者取引,アドバイザリーフィー等の不存在,情報開示,反社会的勢力などの事項についてなされます。

これらの表明保証事項は,デューディリジェンスの事項とも重なるものです。

買主に関する表明保証としては,売主と同様に,設立および存続,本契約の締結および履行,強制執行可能性,法令等との抵触の不存在,許認可等の取得,倒産手続等の不存在,反社会的勢力,株式に対する権利などの事項についてなされます。

3.デューディリジェンス及び交渉における注意点

表名保証条項を規定した場合であっても,表明保証責任を巡る紛争が生じた場合,当該条項の文言から直ちに一定の結論が導き出されるわけではなく,当該条項の解釈や当てはめに関し,契約締結時における対象事業に関する契約当事者の認識及び具体的な表名保証条項をめぐる交渉過程・内容などが問題となります。

買収者(買主)においては,デューディリジェンスにおいて開示をうけた資料に含まれる情報については,事後,契約相手(売主)に対して表明保証違反に基づき補償を求めることは困難と認識しておく方が安全です。開示をうけた情報により明らかとなったリスクであっても,なお契約において,契約相手(売主)に責任を負担させたいと考える場合,別途特別補償条項等の規定を検討するべきであるといえます。

一方で,売主としては,対象事業の内容及び同事業に係る特定の事項に関するリスクの内容を改めて正確に把握しておくことが必要です。

M&Aにおいては,事後的紛争を回避するためにも,表明保証条項を巡る交渉においては,その交渉過程において可能な範囲で自己の意図や懸念事項を明確に表示しておくとともに,その交渉内容や経過を極力記録化しておくことが必要です。具体的には,打合せの際の議事録の作成(状況によっては録音),文書やメールなど記録にのこる方法でのやりとりなどをすることを心がけるべきであるといえます。

(参考)表明保証に関する裁判例

東京地判平成19年7月26日 判例タイムズ1268号192頁