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 この判例は、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないと判断しました。

事案の概要

⑴ Y社は、A組合との間に「Y社に所属する海上コンテナトレーラー運転手は、双方に協議して認めた者を除きすべてA組合の組合員でなければならない。Y社は、Y社に所属する海上コンテナトレーラー運転手でA組合に加入しない者及びA組合を除名された者を解雇する」との本件ユニオン・ショップ協定を締結していた。

⑵ Xらは、Y社に勤務する海上コンテナトレーラー運転手であったが、A組合を脱退し即刻訴外B組合に加入し、その旨をY社に通告した。 

⑶ Y社は、A組合の要求を受けて本件ユニオン・ショップ協定に基づきXらを解雇した。そこで、Xらは、本件解雇を無効として労働契約上の地位確認等を請求した。

第一審:請求認容、控訴審:控訴棄却

判旨・判旨の要約 上告棄却

⑴ 労働者には、自ら団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。
 
 したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法90条の規定によりこれを無効と解するべきである。 

⑵ 本件解雇は、本件ユニオン・ショップ協定によるY社の解雇義務が生じていないときにされたものであり、本件において他の合理性を裏付ける特段の事由を認めることはできないから…解雇権の濫用として無効である。

解説・ポイント

 ユニオン・ショップ協定とは、労働組合に加入しない労働者又は組合員でなくなった労働者を解雇できることとする協定のことをいいます。
 近年の労働組合の推定組織率は16~17%と低迷し、組合離れ進んでいますが、企業別組合が普及している日本ではユニオン・ショップ協定を締結している労働組合が過半数を占めていると言われています。

 本判例では、ユニオン・ショップ協定によって憲法28条が保障する組合選択の自由を侵害することは許されないとし、他の組合に加入している者との関係では、同協定は憲法28条が設定する公序に違反し無効となる(民法90条)と判断しました。本判例は現在よりも組合組織率の高かった30年以上も前の事件ですが、実務では今なお本判例と同様の扱いがなされています。 
 
 本判例が判断しているように、すでに他組合に加入している組合員をユニオン・ショップ協定違反を理由に解雇することは、解雇権の濫用として無効になることとなります。

 裏を返せば、非組合員に対しては同協定違反を理由に解雇ができるとも思われますが、そもそもユニオン・ショップ協定自体の有効性について争いがあることや近年の低迷した組合組織率から、同協定違反を理由に解雇事由が生じたとしても、直ちに解雇するのではなく、解雇権の濫用として解雇が無効とならないか慎重に検討する必要があるでしょう。