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 この判例は、臨時員は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とする以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結している本工を解雇する場合とは合理的な差異があるため、当該臨時員の雇止めは適法であると判断しました。

事案の概要

(1)  Xは、Y社A工場の臨時員として2か月の有期労働契約を5回にわたり更新してきた。
 Y社の臨時員は面接で健康状態等を簡単に確認して採用され、定着率も高くはなく比較的簡易な作業に従事していた。
(2)  Y社は、経営悪化のため人員を削減することとし、Xを含む臨時員とパートタイマー全員の雇止め、本工の販売部門への異動、自然退職等で対応する決定をした。
(3)  経営悪化を理由に雇止めされたXが、Y社への地位確認を求めて提訴した。

第一審:解雇無効、原審:本件雇止めを適法と判断

判旨・判旨の要約 上告棄却

(1)  5回にわたる契約の更新によって本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいはXとY社との間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない。

(2)  他方、臨時員との雇用関係はある程度の継続が期待され、Xとの間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては解雇に関する法理が類推される。

(3)  もっとも、臨時員は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とする以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結している本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異がある

(4)  したがって、本工の希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ない。

解説・ポイント

 判例上、雇止めの法理には、大きく分けて2つのタイプがあります。
 1つは、実質無期契約型といわれるものです。これは、①業務の客観的内容②当事者の主観的態様③更新の手続等の諸事情を勘案し、当該契約が期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態で存在していたと認められるときには、雇止めの通知は実質的に解雇の意思表示にあたるため、解雇権濫用法理など解雇に関する法理が類推適用されるとするものです(労契法19条1号)。

 もう1つは、期待保護型といわれるものです。例えば、長期にわたる反復更新がなく更新手続も曖昧とはいえない(③)ため、実質的に無期契約と異ならない状態で存在しているといえないような場合でも、業務内容の恒常性や当事者の言動・認識(②)などから、労働者が更新を期待することにつき合理性があると認められる場合には同様に解雇に関する法理が類推適用されるとするものです(労契法19条2号)。
 
 本件事案は、この期待保護型に当たるため雇止めは認められないのではないかが争われましたが、臨時工(パートやアルバイト)は本工(正社員)とは異なり簡易な手続きで採用されていたことや、従事する職務内容も本工より簡易なものであったこと等から(臨時工に契約更新の合理的期待があったとまではいえず)雇止めを適法と判断しました。

 裁判においては、雇止めも解雇と同じように、労働者の生活に重大な影響を与えることになることから、労働者に有利な事情が総合的に考慮され、雇止めの適法性を厳格に判断する傾向にあります。雇止めの適法性に関する事実認定は高度な法律判断が必要となりますので、雇止めを行う前に、労務の専門家である弁護士などの専門家に相談して適法性を確認することが大切です。