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この判決は、不活動仮眠時間が労基法上の労働時間に該当するかそれとも休憩時間かは、労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まり、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間にあたると判断しました。
事案の概要
(1)ビル管理会社の従業員らは、仮眠時間を与えられていた。
仮眠時間中は、配属先のビルからの外出を原則として禁止され、仮眠室における在室や電話の接受、警報に対応した必要な措置を執ること等が義務付けられ、飲酒も禁止されていた。
(2)ビル管理会社では、仮眠時間について労働時間に算入せず、泊り勤務手当を支給するのみであった。
ただ、残業申請をすれば、実作業時間に対して時間外労働手当及び深夜就業手当が支給された。
(3)従業員らは、仮眠時間について時間外勤務手当及び深夜就業手当ないし労基法37条所定の深夜割増賃金の支払を請求した。
第一審は労働者の請求認容、控訴審は第一審を一部変更
判旨・判決の要約 破棄差戻し
(1)実作業に従事していない仮眠時間(以下「不活動仮眠時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動仮眠時間において、使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる。
(2)本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。
(3)本件仮眠時間が労基法上の労働時間と評価される以上、ビル管理会社は、本件仮眠時間について、労基法13条、37条に基づいて時間外割増賃金、深夜割増賃金を支払う義務がある。
解説・ポイント
仮眠時間に対応する賃金を活動中の賃金より低く設定して契約することは可能です。
労働者の労務が実作業を中心とするもので、内容において可分であれば、労務の内容の相違に着目して別の賃金を定めた労働契約を締結することも特に禁じられているわけではありません。
しかしながら、最低賃金法との関係については留意する必要があります。