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 この判例は、期間設定の趣旨・目的が労働者の適正評価であるときは特段の事情が認められない限りその期間は試用期間と解するのが相当であり、解約権を行使(本採用を拒否)するためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえることが必要となると判断しました。

事案の概要

(1)  Xは、学校法人Yにおいて、社会科教員として採用された。

(2)  採用に際して、XはY理事長から、採用後の身分は常勤講師として、契約期間は一応1年とすること、および、1年間の勤務状態を見て再雇用するか否かの判定をすることについて説明を受けるとともに、口頭で採用の申し出を受け、受諾した。

(3)  Xは、Yから求められるままに「Xが1年の期限付きの常勤講師としてYに採用される旨の合意が成立したこと及び右期限が満了したときは解雇予告その他何らの通知を要せず期間満了の日に当然退職の効果が生ずること」などが記載された「期限付職員契約書」に自ら署名捺印した。

(4)  Yは、採用から1年後、Xの労働契約は期間満了により終了する旨の通知を行ったので、Xが教諭の地位の確認と解雇通知後の賃金の支払いを求めて提訴した。

第一審は本件契約は期間満了により終了したものと判断し、原審もXの控訴を棄却

判旨・判旨の要約 破棄差戻し

(1)  使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。

(2) 試用期間付雇用契約の法的性質については、試用期間中の労働者に対する処遇の実情や試用期間満了時の本採用手続の実態等に照らしてこれを判断するほかないところ…他に特段の事情が認められない限り、これを解約権留保付雇用契約であると解するのが相当である。
 そして、解約権留保付雇用契約における解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許されるものであって、通常の雇用契約における雇用の場合よりもより広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきであるが、試用期間付雇用契約が試用期間の満了により終了するためには、本採用の拒否すなわち留保解約権の行使が許される場合でなければならない

(3)  本件では、Xが1年後の雇用の継続を期待することはもっともな事情があったこと等から、X・Y間に1年の期間満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立しているなどの「特段の事情」が認められるかについてはなお疑問が残るとして、原判決を破棄・差し戻した。

解説・ポイント

 本判決は、①期間の定めのある雇用契約が適正評価のための試用期間に当たるか、または期間満了により当然に契約が終了する合意などの特段の事情があるかを判断し、②当該期間の定めが試用期間と言える場合には、当該雇用契約は解約権留保付き雇用契約にあたり、本採用の拒否を行うためには客観的合理的理由及び社会通念上相当性が必要であると判断したうえで、本件雇用契約は①の段階で特段の事情の存在に疑問が残るとして原判決を破棄・差戻しています。 

 多くの企業では、労働者を採用する際に3~6か月の試用期間を設けていますが、採用担当者のなかには本採用を拒否することは使用者の裁量の範囲内と考えている方もいます。
 しかし、試用期間を設けたのちに本採用を拒否するためには客観的合理的理由があり社会通念上相当といえることが必要となるため、本採用を拒否することは実際のところ本採用後の社員を解雇するのとほぼ同様の厳格さが求められます。 

 使用者においては、期間満了後に当然に契約が終了することを前提に雇用契約を締結する場合には、その旨を明示するなど労働者に説明し、了承を得ておくことが必要です。期間の定めが適性判断のためだなどと労働者に安易に契約の更新を期待させる発言を行うことは厳に控えなければなりません