【読むポイントここだけ】

 この判決は、公務員の労働基本権が保障されるとしつつも、職務の公共性などの理由から、争議行為やあおり行為などを禁止することは憲法28条に違反しないとしました。

【事案の概要】


(1)当時の農林省職員によって組織される全農林労働組合が、組合員に対して争議行為への参加をあおった。
(2)当時の国家公務員法によって禁止される争議行為に該当するとして、5名の組合役員が起訴された。

第一審全員無罪、原審は全員有罪

【判旨 判決の要約】上告棄却

(1)憲法28条の労働基本権の保障は公務員に対しても及ぶ。
(2)公務員の地位の特殊性と職務の公共性に鑑みると、公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることができる。
(3)公務員の勤務条件は法律・予算によって定められることから、争議行為を行うことは議会制民主主義に反する。私企業と異なり市場抑制力が働かない。争議行為を制限する代償措置として人事院が設けられている。

【関連裁判例】

最高裁昭和52年5月4日(名古屋中郵事件)
3公社5現業の職員の勤務条件について、憲法83条の財政民主主義の原則に基づき、争議権だけでなく、団体交渉権についても憲法上の保障を否定しました。

【解説・ポイント】

 国家公務員だけでなく、地方公務員及び地方公営企業職員についても、勤務条件法定主義及び財政民主主義などから労働者の争議行為が禁止されています。