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 この判例は、就業時間中に行った組合活動が職務専念義務に違背する行動に当たるかどうかは、使用者の業務や労働者の職務の性質・内容、当該行動の態様など諸般の事情を勘案して判断されることになると判示し、就業中の本件リボン着用による組合活動は正当な組合活動とはいえないと判断しました。

事案の概要

(1)Xは、ホテルオークラを経営する会社である。Xのホテルの従業員で組織するA労働組合は、Bホテル労連に加盟していた。

(2)A労働組合は、賃上げを求めてXと団体交渉を行ったが、回答を不満として、2度にわたり就業時間中に胸にリボンを着用して就労する「リボン闘争」を実施した。
 着用したリボンは、直径6㎝の又は直径5㎝の花形で、それぞれ黒字又は朱書きの「要求貫徹」などの文字が印字されていた。

(3)Xは、警告を無視してリボン闘争を指導したとして、組合三役Cら6名に懲戒処分を行った

(4)A労働組合、Bホテル労連及びCらは、懲戒処分は不当労働行為に当たるとして救済を申し立てたところ、東京地労委Yは、本件処分は正当な争議行為に対する不利益取扱い(労組7条1号)に当たるとして救済命令を発した。

(5)Xは、命令の取消しを求めて行政訴訟を提起した。

第一審請求認容(救済命令の取り消しが認められた)
控訴審控訴棄却(Aらの不服申し立ては認められなかった)

判旨・判旨の概要 上告棄却

(1)本件リボン闘争は、就業時間中に行われた組合活動であって参加人組合の正当な行為に当たらないとした原審の判断は、結論において正当として是認することができる。

(2)(伊藤正巳裁判官補足意見)就業時間中の組合活動は、使用者の明示又は黙示の承諾があるか又は労使の慣行上許されている場合のほか認められないとされているが、これは、労働者の負う職務専念義務、すなわち労働契約により労働者は就業時間中その活動力をもっぱら職務の遂行に集中する義務を負うことに基づくものとされている。

(3)もっとも、職務専念義務と何ら支障なく両立し、使用者の業務を具体的に阻害することのない行動は、必ずしも職務専念義務に違背するものではないと解する。
 職務専念義務に違背する行動に当たるかどうかは、使用者の業務や労働者の職務の性質・内容、当該行動の態様など諸般の事情を勘案して判断されることになる。

(4)本件リボン闘争は、組合員たる労働者の職務を誠実に履行する義務と両立しないものであり、ホテルの業務に具体的に支障を来すものと認められる。

解説・ポイント

 労働契約上の義務に反する活動には正当性は認められません。
 例えば、勤務時間中の組合活動は労働義務(職務専念義務)に反するため、使用者がこれを許容していない限り正当性を欠くものとされています。

 本事案で問題となったように、勤務時間中のリボン・バッジ着用については、労働契約上の職務専念義務に反するため正当性を欠くと判断されることになります(つまり、正当な組み合活動にはあたらないということです)。

 他方、就業時間中ではなく、休憩時間中に食堂など会社の施設で平穏な態様でビラを配布するなど職場内の秩序を乱す恐れのない態様で組合活動が行われている場合には、実質的に使用者の許諾がなくとも正当な組合活動と判断される可能性があります。このような場合、施設の利用について使用者が許諾を与えないこと自体が施設管理権の濫用と判断され得るためです。

 正当な組活動といえるかは、一般的に組合活動の態様で判断されるようですが、実際には就業時間中の組合活動か休憩時間中の組合活動かが問題とされているようにも見受けられます。