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この判決は、労働者が請求していた年次有給休暇の時季指定日に、たまたまその所属する事業場において予定を繰り上げてストライキが実施されることになり、当該労働者がこのストライキに参加しその事業場の業務の正常な運営を阻害する目的をもって、右請求を維持して職場を離脱した場合には、右請求に係る時季指定日に年次有給休暇は成立しないと判断しました。
事案の概要
(1) 労働者は、旧国鉄に勤務する職員であり、労組津田沼支部の執行委員である。当該 労働者は、津田沼電車区運転検修係の職務に従事していたが、同電車区は、当該労働者の所属する検修部門のほか、列車乗務員運転部門等があり、年次有給休暇の請求に対する時季変更権の行使・不行使は電車区長が決定していた。労働基準法36条所定の時間外労働・休日労働協定の適用に当たっては、同電車区は1つの事業場として扱われてきた。
(2) 当該労働者が所属する労組が旅客列車乗務員を対象とする指名ストを実施した。
(3) 当該労働者が請求していた年次有給休暇の期間中に偶然、上記ストライキが行われることになったため、年次有給休暇の請求が事実上承認されていることを確認しながら、年次有給休暇の請求を維持した上で、積極的に争議行為に参加した。
(4) 旧国鉄は年次有給休暇の承認を取り消し、当日の職場離脱について欠勤として処理し、賃金カットを行ったため、当該労働者は賃金カット分と付加金の支払いを求めた。
第一審は請求棄却、控訴審は控訴棄却
判旨・判決の要約 上告棄却
上告人は、争議行為に参加して津田沼電車区の正常な業務の運営を阻害する目的をもって、年次有給休暇の請求を維持し、職場を離脱したものであって、このような職場離脱は、労働基準法の適用される事業場において業務を運営するための正常な勤務体制が存在することを前提としてその枠内で休暇を認めるという年次有給休暇制度の趣旨に反し、本来の年次有給休暇権の行使とはいえないから、上告人の請求に係る時期指定日に年次有給休暇は成立しないというべきである。
解説・ポイント
年次有給休暇を利用して他の事業場における争議行為に参加するかどうかは労働者の自由であり、そのことについては使用者が干渉することができないというのが判例ですが、労働者が年次有給休暇を利用してその所属する事業場における争議行為に参加することまで認めなければならないというのは、年次有給休暇制度の趣旨に沿わないものといえます。
ここで自己の所属する事業場における争議行為への参加を他の事業場における争議行為への参加の場合と区別して扱おうとするのは、年次有給休暇制度の運用は、当該労働者の所属する事業場を基準としてなされるべきであるとする考え方が前提にあるためです。