前回は、療養補償給付及び休業補償給付について紹介致しましたので、今回は障害補償給付についてご紹介いたします。
 また、障害補償給付に類似した給付金である障害補償年金前払い一時金及び障害補償年金差額一時金についても簡単にではありますが、ご紹介いたします。

1.障害補償給付について
 障害補償給付とは、労働者が業務上(通勤により)負傷し、又は疾病にかかり、治った時に身体に障害等級に該当する障害がある場合に、その障害等級(第1級から第14級)に応じ、障害補償年金又は障害補償一時金として支給される給付金のことをいいます。
 なお、障害補償給付と障害給付の違いは、業務災害によるものか、通勤災害によるものかで呼び方が異なります(前者が障害補償給付、後者が障害給付といいます)。これは、療養補償給付と療養給付、休業補償給付と休業給付についても同様です。この記事ではまとめて○○補償給付と呼ぶことにします。
 因みに、業務災害に「補償」がつくのは、会社の責任で「補償」する必要があるからです。通勤災害は、通常、会社は関与しないので会社に直接の責任はない、という点から「補償」がつきません。

2.障害補償給付の種類と金額
(1)障害補償年金
 障害補償年金は、「年金」と呼ばれることからも分かるとおり、一定の支払期月ごとに支払われることになります。
 障害補償年金は、障害補償一時金と異なり、定期的に支払われることから、その障害の程度は重く、第1級から第7級までが該当します。 
 最も重い第1級に該当した場合、支払われる金額は、1年につき給付基礎日額の313日分とされ、第7級に該当する場合、1年につき給付基礎日額の131日分となります。
 なお、障害補償年金を受給している者が、就職する等して賃金を得た場合であっても、年金額が減額されたり、年金の支給が停止されたりすることはありません。

(2)障害補償一時金
 障害補償一時金は、「一時金」とあることからも分かるとおり、支給されるのは1度限り支給されるものです。
 障害補償一時金は、障害等級が第8級から第14級に該当する場合に支給されます。第8級に該当すると、給付基礎日額の503日分が支給され、第14級に該当すると、給付基礎日額の56日分が支給されることになります。

3.障害等級の併合について
(1)併合とは
 同一の事故による身体障害が2つ以上ある場合には、原則として、そのうち重い等級の方を全体の障害等級として認定されます。これを併合といいます。
 例えば、第12級と第14級の障害がある場合、障害等級は第12級となります。

(2)併合繰上げ
 同一の事故による第13級以上の身体障害が2つ以上あるときは、後述のとおり、重い方の障害等級を繰り上げて、全体の障害等級が決定されます。これを併合繰上げといいます。具体的な併合繰上げは以下の要領で行われます。
 ア 第13級以上に該当する身体障害が2つ以上あるときは、重い方の障害等級が1級  
  繰り上げられます。
 イ 第8級以上に該当する身体障害が2つ以上あるときは、重い方の障害等級が2級繰
  り上げられます。
 ウ 第5級以上に該当する身体障害が2つ以上あるときは、重い方の障害等級が3級繰
  り上げられます。
 例えば、第13級と第12級の障害がある場合は、併合繰上げにより第11級となり,第8級と第7級の障害がある場合は、併合繰上げにより第5級となり、第5級と第4級の障害がある場合は、併合繰上げにより第1級となります。 

4.障害等級の加重について
 加重とは、業務災害又は通勤災害によって同一の部位に新たに障害が加わった結果、障害等級表上、現存する障害が既存の障害より重くなった場合のことをいいます。自然的経過又は再発により障害の程度を重くした場合は「加重」に該当しません
 上記のとおり、既に身体障害(業務上であるか否かは問いません)のあった者が、業務上の(又は通勤による)負傷又は疾病により、同一の部位について障害の程度を加重した場合は差額支給が行われます。
 例えば、加重前後の身体障害の該当する障害等級がともに7級以上である場合は、現在の身体障害の該当する障害等級に応ずる障害補償年金の額から、既にあった身体障害の該当する障害等級に応ずる障害補償年金の額を控除した額が支給されることになります。
 なお、既存の障害で既に障害補償年金を受けている労働者は、加重の結果、新たに差額相当額の障害補償年金の受給権を取得することになるので、この労働者は、2つの障害補償年金の受給権者となることになります。

5.障害等級の変更について
 変更とは、障害補償年金の支給理由となっている障害の程度が新たな傷病によらず、又は傷病の再発によらず、自然的に変更(増悪又は軽減)した場合をいいます。
 障害補償年金を受ける労働者の当該障害の程度に変更があったため、新たに他の障害等級に該当するに至った場合には、新たに該当するに至った障害等級に応ずる障害補償年金又は障害補償一時金が支給されることになります。そのため、その後は、これまでの障害補償年金は支給されないことになります。

6.再発について
 障害補償年金の受給権者の負傷又は疾病が再発した場合は、従前の障害補償年金の支給は打ち切られてしまいます。そして、再治癒後の身体障害については、その該当する障害等級に応ずる障害補償年金又は障害補償一時金が支給されることになります。

7.障害補償年金前払一時金について
 前述したとおり、障害補償年金は、一定の支払期月ごとに支払われることになります。しかし、障害の残った労働者が社会復帰するには、一時的にまとまった資金が必要となる場合があります。そこで、一定の範囲内の年金額を一括し一時金として前払いする制度が設けられています。この制度により、政府から支給されるものを障害補償年金前払一時金といいます。

(1)支給額
 障害補償年金前払一時金の支給金額は、障害等級に応じて、受給権者が選択した金額となります。
 例えば、最も重い障害等級第1級の場合は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分、1200日分又は1340日分の内から受給権者が選択することになります。
 また、第7級の場合には、給付基礎日額の200日分、400日分又は560日分から受給権者が選択することになります。

(2)請求
 障害補償年金前払一時金の請求は、「一時金」とあることから分かるとおり、同一の事由に関し1回に限り行うことができます。当該一時金の請求は2回、3回と分けて行うことができません。
 また、障害補償年金前払一時金の請求は、障害補償年金の請求と同時に行わなければなりません。ただし、障害補償年金の支給年金の支給の決定の通知のあった日の翌日から起算して1年を経過するまでの間は、当該障害補償年金を請求した後においても障害補償年金前払一時金を請求することができます。
 したがって、当該一時金の請求は、遅くとも、障害補償年金の支給決定通知日の翌日から起算して1年以内に行わなければなりません

8.障害補償年金差額一時金について
(1)支給要件及び支給額
 障害補償年金を受ける者が死亡した場合に、その者に支給された当該障害補償年金の額及び当該障害補償年金にかかる障害補償年金前払一時金の額の合計額が、当該障害補償年金にかかる障害等級に応じ、障害補償年金前払一時金の最高限度額に満たないときは、その者の遺族に対し、その請求に基づき、その差額に相当する額の障害補償年金差額一時金が支給されます。
 すなわち、差額一時金の額=前払一時金最高限度額-受給額となります。

(2)受給権者
 障害補償年金差額一時金の受給権者となるのは、労働者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であり、これらのうち最先順位者が受給資格者となります。また、これらのいずれにも該当する者がいない場合には、労働者の死亡の当時その者と生計を同じくしない配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹が受給資格者となります。優先順位は同様となります。
 なお、優先順位者が2人以上あるときは、そのすべての者が受給権者となり、1人当たりの支給額はその人数で除して得た額になります。

9.まとめ
 今回は障害補償給付を紹介いたしました。
 今回紹介した給付金は、業務災害又は通勤災害により被災した結果、重い障害が残った場合に請求することになる給付金です。