寄与分とは?
寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に特に貢献した相続人がいた場合に、この特別の貢献をした相続人に対して与えられる相続財産の持分のことをいいます(民法904条の2)。
寄与行為の類型
寄与行為の類型として、主に、以下のようなものがあります。
① 被相続人の事業に関する労務の提供による場合
② 被相続人の事業に関する財産上の給付による場合
③ 被相続人の療養看護による場合
④ その他(①~③の複合型など)
寄与分の権利者はだれか?
寄与分は、相続人に限られます(民法904条の2)。
また、代襲相続人も相続人であるため、寄与分の権利者となります。
相続人の配偶者や子、内縁の妻など相続人以外の者は、寄与分を主張できません(※)。
寄与分が認められるか否かについては、相続トラブルでも争点となることが多いため、寄与分が認められるのか気になるのであれば、専門家である弁護士に相談してみることをお勧め致します。
※ 2019年7月1日に施行された特別寄与料の制度の新設により、相続人の配偶者や相続人の子など相続人ではなくても、被相続人の財産の維持や増加に貢献した者は、寄与の程度に応じた金銭の支払いを請求することができるようになりました。この特別寄与料の請求は、改正法施行後の相続に適用されることになります。
寄与分はどのように請求するか?
寄与分は、当事者の主張(申立て)を待ってはじめて、その存否や金額が判断されます。特別受益と同じように、主張がなければ寄与分は考慮されないまま、遺産分割の話は進んでしまうことになります。
寄与分について争い裁判となった場合、家庭裁判所は、当事者の申立て後に、寄与の時期、方法・程度、相続財産の額などその他一切の事情を考慮して裁量的に寄与分を決定します(民法904条の2第2項)。
なお、申立に必要な費用・書類・申立先等についてはこちらをご参考ください。
寄与分の算定方法は?
まず、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額から寄与分を控除して相続財産を算出します。これを「みなし相続財産」といいます。
次に、「みなし相続財産」に相続分の割合を乗じた寄与分権利者の相続分を算出します。
最後に、寄与分権利者の相続分に寄与分を加えて具体的相続分を算出することになります(民法904条の2第1項)。
寄与分の具体例
1.みなし相続財産を計算
被相続人:夫、相続人:妻及び子2人、相続財産:5000万円(夫死亡時)、妻:夫の資産形成に貢献し、1000万円の寄与分がある場合について検討してみます。
この場合、まず、「みなし相続財産」を算定します。
具体的には、妻には被相続人である夫の財産形成に1000万円の寄与分があるので、夫の相続財産5000万円から寄与分1000万円を控除します。
そうすると、「みなし相続財産」は4000万円であることが分かります。
2.具体的相続分を計算
次に、相続人である妻と子2人の具体的相続分を算定します。
上記「寄与分の算定方法」で述べたように、「みなし相続財産」に各相続人の相続割合を乗じて具体的相続分を算定します。
妻の法定相続分は2分の1、子の法定相続分は2分の1ですが、今回の具体例では子が2人いるので子の法定相続分2分の1に2(人)を乗じます。
そうすると、子2人の相続分はそれぞれ4分の1となります。
3.寄与分を加算
最後に、「みなし相続財産」に相続分を乗じて算出した金額に寄与分を加算しますので、今回の妻の具体的相続分は、4000万円×2分の1+1000万円=3000万円となり、子2人の具体的相続分は子それぞれ4000万円×4分の1=1000万円となります。
福岡の弁護士法人いかり法律事務所へ
寄与分の請求にあたり、被相続人の財産形成への維持・形成を行った行為が、寄与分として評価されるのかを判断することは通常難しいと思われます。
寄与分をふくめ、相続・遺産トラブルについてお悩みの方は、相続・遺産トラブルに強い福岡の弁護士法人いかり法律事務所へご相談下さい。