任意整理とは?
任意整理とは、裁判所を利用することなく、当事者間で交渉し、債権額の減額を目指す債務整理の方法の一つです。
借金の際に法定利息を超える高い利息を支払っていた場合、債権額を大幅に減らせることや、払いすぎた利息を過払い金としてお金を取り戻せる場合もあります。各債権者ごとに交渉をすすめ、支払可能な毎月の支払額を合意して弁済していくことになります。
債務整理には、主に任意整理や自己破産、個人再生手続などがありますが、任意整理は、他の債務整理と異なり、裁判所を介さず当事者間の交渉で進める手続きであることから、他の債務整理よりも比較的安価かつ簡易な手続きで負債総額の減額や返済期間の見直しを行うことができます。
任意整理は、債務整理の中で最も多く利用される手続きとなっています。
任意整理を選ぶメリット
任意整理を選ぶのであれば、任意整理を選ぶことによって享受できる経済的メリットを十分に理解しておく必要があります。主なメリットは以下のとおりですが、個人の収支・生活状況により享受できる程度は様々です。
債務整理の前に、一度弁護士など専門家に相談してみると良いでしょう。
1.遅延損害金等の返済が不要になる
貸金業者へ借入をすると、多くの場合「元金」と「利息」を返済することになります。支払期限までに返済がされないと遅延損害金や将来利息も発生する場合があります。
任意整理を選択することにより、当事者間で分割弁済又は一括弁済の返済を行うことについて合意(和解)できれば、将来の金利や遅延損害金を返済する必要がなくなります。
借入額が大きく、借入期間が長期間に及ぶ場合には、将来の金利や遅延損害金の金額も高額になるため、将来の金利や遅延損害金の免除は大きなメリットとなります。
2.取り立ての催促をストップ
一般的に、任意整理は、弁護士や司法書士が代理人となって債権者らと交渉を行います。
代理人から受任通知書が送付されると、債権者らは以降債務者へ弁済を請求することができなくなります。債権者らは受任通知を受け取ると、正当な理由なく債務者本人に債務の弁済を請求してはならなず(貸金業法21条1項9号)、違反した場合には罰則が科されることになるからです(同法47条の3第1項3号)。
債権者からの取り立てがなくなることは、他の債務整理と同じように、任意整理においても大きなメリットといえます。
3.分割弁済が可能となる
一般的に、任意整理においては、債務者の代理人から債権者らに対して和解交渉を行います。
和解交渉を行う前に、代理人は各債権者から開示された取引履歴などを調査し、利息制限法所定の利率で再計算すること(これを「引き直し計算」といいます)により債務者の負債総額を確定します。債務者の収入や生活状況などから現実的に月々返済可能な弁済原資を設定することになります。
これにより、毎月の高額な借金やローンの返済に追われて日常生活に支障が生じるような事態が発生しにくくなります。
現実的な返済額で分割弁済ができるようになることも任意整理を選択するメリットの1つといえます。
なお、支払期間・支払方法は当事者間の交渉によりますが、分割払いだけではなく、負債総額が少額になる一括払いなど、様々な支払方法を選択することができます。
4.債務整理の対象を選択できる
任意整理は、自己破産や個人再生手続と異なり、すべての債務を対象とすることなく、特定の債務を対象として債務者の負債総額や弁済方法等について交渉することができます。
実務上は、特定の債務だけを債務整理の対象とすることができるため、家族や勤務先に任意整理を行っていることを知られるおそれが小さいこともメリットになっています。
5.簡易で比較的安価な債務整理手続き
任意整理は、他の債務整理と異なり、裁判所を介さず当事者間で交渉を行うことから、裁判所への予納金や手数料などはなく、準備しなければならない書類も少なくなる上、弁護士や司法書士等へ依頼した場合の費用も比較的低額となる傾向になります。
6.元本が減額されることもある
先に述べたように、任意整理を選択すると、利息制限法所定の利率を超えて支払った部分を元本に充当して再計算する引き直し計算を行って負債総額を確定させるため、引き直し計算の結果、過払い金などがあると元本が減額される場合があります。借金の元本が減額される場合があることも任意整理を選択するメリットといえます。
ただし、分割払いによる任意整理の場合には、利息制限法上の元金未満に負債総額を減額することは難しいとされているため、負債総額を免除する自己破産などと比べるとメリットは大きくありません。
任意整理の大きな流れ
1.弁護士や司法書士に相談する
弁護士や司法書士に相談することにより、債務者の生活状況に応じた適切な債務整理について説明を受けることができます。
相談時には、債権者からの現在の借入状況(何社から借入しているのか、月々の返済額はいくらか、収入に対して支出がいくらあるのか等)について確認します。
債務整理手段として任意整理が適切と判断された場合は、弁護士や司法書士から任意整理について説明・案内を受けることができます。
2.受任通知書を送付する
代理人となる弁護士や司法書士に依頼すると、代理人から債権者にあてて受任通知書が送付されます。
受任通知書では、債権者の負債総額を調査・確定するために、債権者との取引履歴について開示を依頼することになります。
取引履歴の開示時期は、債権者によっては、2か月近くかかることもありますが、取引履歴には、残額、月々の支払額、金利等の情報が記載されており、和解案を検討するために必要となります。
3.和解案の提示
代理人を通じた交渉では、代理人から和解案を提示することになります。和解案では、まず将来利息の免除を請求します。免除が認められると、毎月の返済額はこれまでより大幅に減額されることが期待できます。
ただし、任意整理は、当事者間の交渉に過ぎないため、債権者が必ずしも和解案に応じてくれるわけではありません。和解案に応じる条件として、弁護士が介入してからストップしていた借入金の遅延損害金を上乗せして支払わなければならない場合もあります。
4.和解成立
交渉の結果、負債総額や弁済方法等について合意できると和解書が届きます(※依頼した弁護士が和解書を準備する場合もあります)。これで和解が成立し、任意整理手続きは終了となります。
和解成立後は、合意した内容に沿って債務者は債務を弁済する必要があります。
代理人より和解書が債権者に返送されると、その後、代理人から債権者へ辞任通知を送付することになります。以降、債権者とのやり取りは債務者本人が直接行うことになります。
任意整理に関するよくある質問5選
Q1.任意整理後に支払いが遅れたらどうなりますか?
A1.和解書の条項にもよりますが、2回以上支払が確認できなかった場合は、残額の一括請求をする等の文言が記載されていることがあります。
返済日の前日までには支払を完了しておく等、返済が滞ることがないように注意しなければなりません。
Q2.任意整理をするとローンが組めなくなりますか?
A2.ローンが組めなくなる、いわゆるブラックリストへの登録は、信用情報機関にもよりますが、ローンが組めなくなる可能性があります。
ただし、一般的に信用情報機関への登録は5年〜7年で抹消されるといわれています。
Q3.過払い分が戻るというのは本当?
A3.本当です。返済の金利が利息制限法上の法定利息以上に設定されていた場合は、違法な利息となります。
そのため、利息制限法所定の利息で計算し直して支払う必要のなかった利息分については返還を請求することが可能です。
Q4.弁護士などに依頼せず自ら任意整理することは可能?
A4.可能ですが、債務者本人が代理人を介さず、直接債権者と交渉することは現実的ではありません。
消滅時効にかかっていた債務について承認してしまい時効が更新するおそれもありますので任意整理を選択するなら代理人に依頼した方がよいでしょう。
なお、任意整理とよく似た債務整理に「特定調停」という方法もありますので、詳しくはこちらをご覧ください。
Q5.弁護士費用の分割払いは可能か?
A5.当事務所では、弁護士費用は一括での支払いを原則としていますが、分割払いについてご相談頂くことは可能です。
弁護士法人いかり法律事務所では、弁護士費用として以下の料金設定でご依頼を承っておりますが、弁護士費用については個別に相談に応じていますのでまずは無料法律相談をご利用のうえご相談下さい。
目安:1社あたり55,000円(税込)を基本としますが、債権者数によって変わってきます。
福岡の弁護士法人いかり法律事務所へ
福岡市にある弁護士法人いかり法律事務所は、任意整理をはじめ、個人再生手続や自己破産など債務整理手続の相談、解決実績が多数あります。
借金やローンなど負債がかさみ、債権者からの取り立ての対応に困っている、自己破産や任意整理を検討しているけれども、どのような申し立てがあるのか手続を行うのか分からない、弁護士に債務整理を依頼したいけれど弁護士費用を支払えないなど、様々なお悩みを抱えている方がいらっしゃると思います。
当法律事務所は、初回無料法律相談を実施していますので、まずは無料法律相談をご利用のうえ、ご自身にとって最も適切な債務整理の手続きをご検討下さい。ご依頼頂く場合の弁護士費用についてもご相談を承りますので、まずはお電話やメール、LINE等で当法律事務所までお問い合わせ下さい。
なお、債務整理には任意整理以外にも自己破産や個人再生など裁判所を介した手続きがあります。福岡市消費生活センターのHPにも各債務整理の概要とメリット・デメリットが挙げられています。