この記事では,借金の返済が苦しい方や借金を減らしたい,チャラにしたいが,どういう手続があるのか分からない方,どの手続を選ぶべきか迷われている方に向け,自己破産と個人再生がどういった手続であるか,両手続で異なる点を簡単にご説明し,ご自身がどちらの手続を選ぶかをお考えいただくためのポイントをご説明します。

 このページでご紹介する手続きは、債務整理の一部です。他にも借金返済の方法は、ありますので、手続きを検討されている方は一度専門家へのご相談をオススメ致します。

自己破産とは

 自己破産とは,支払い不能状態に陥った債務者の申し立てにより,特定の非免責債権を除いて支払を免れるための裁判手続をいいます。
 経済的に困窮し,債務の返済が困難となった方が,経済的な立て直しを図ることを目的とした手続きです。
 概略としては,裁判所に破産の申立をし,ご自身が所有している財産のうち,生活していく上で必要最低限の財産(自由財産)を除いた財産を清算,処分する代わりに,一定の非免責債権(税金や婚姻費用など,破産法第253条)以外の全ての債務の支払する義務を免除される手続になります。

 >>自己破産の詳細は,「破産手続・免責許可の流れ」のページをご覧ください。

個人再生とは

 個人再生とは,将来において継続して又は反復的に収入を得る見込みがあり,住宅ローンの債務を除いた債務総額が50,000,000円以下の債務者の申し立てにより,自宅不動産などの財産を処分することなく,大幅に減額された債務(減額される割合は債務総額によって異なります)を原則として3年間のうちに,裁判所から認可を受けた返済計画(再生計画)に従って分割により返済することで,残りの債務の支払を免れる裁判手続を言います(民事再生法第221,239条)。
 なお,破産手続と同様,税金や婚姻費用などの法律に定められた免除されない債務は債権者の同意がない限り,減額されることはありません。


 >>個人再生手続の詳細は,「個人再生手続の流れ」のページをご覧ください。★

破産と個人再生の違い

 1 債務が免除される範囲の違い

 破産手続では,裁判所より免責が許可されると,非免責債権(税金,婚姻費用など)を除き,全ての債務の返済が免除されます
 一方,個人再生手続は債務が減額される手続ですので,住宅ローンを除いた債務総額の大部分の支払義務が免除されますが,一部は支払わなければなりません。減額後に返済すべき最低金額は,債務総額によって,以下の計算方法により算出されます(民事再生法第231,241条)。

債務総額 返済すべき総額
~30,000,000円 債務総額の1/5又は1,000,000円のいずれか多い金額以上,債務総額の1/5が3,000,000円を超える場合には3,000,000円
30,000,000円~50,000,000円 債務総額の1/10以上

 2 財産の処分に関する違い

 前述のとおり,破産手続は自由財産以外の財産を清算,処分する代わりに債務の支払を免除してもらう手続です。そのため,自由財産以外の財産は破産管財人によって換価(換金されるようなイメージです)されます。自由財産として法律上規定されているのは,990,000円以下の現金,差押禁止財産(生活に必要な衣服や家財道具),破産手続開始決定後に新たに得た財産です(破産法第34条)。

 一方,個人再生手続は財産を清算,処分する必要はありませんので,お手元に残すことができます
 しかし,個人再生手続では,破産手続をした場合に換価した結果得られるであろう金額(清算価値)以上の金額を返済する必要がございます(清算価値保障原則,民事再生法第174,241条)。そのため,清算価値が,前述した計算方法によって算出された返済すべき最低金額を上回っていた場合には,清算価値の金額が返済すべき金額となります。

 3 自宅不動産の取り扱いの違い

 前述のとおり,破産手続は自由財産以外の財産は換価されます。自宅不動産も換価される対象に含まれ,破産管財人による任意売却や競売などにより換価され,手放すことになります。
 個人再生手続では再生計画に住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を定めることができます(民事再生法第199条)。住宅ローン特則を定めた再生計画が裁判所より認可されれば,住宅ローン契約時の契約内容,返済予定のまま,若しくは住宅ローンの債権者の同意を得て返済予定をリスケジュールしてもらい,住宅ローンの返済を継続し,自宅不動産を手放さないまま,個人再生手続によって住宅ローン以外の債務を,上記の計算方法により減額してもらうことができます。
 そのため,住宅ローンが残っている自宅不動産をお持ちの方で,自宅不動産を手放されたくない方は,個人再生手続に適しています

 4 資格制限に関する違い

 破産手続では,破産手続きが継続している期間中に就業が制限される職業があります。例えば,警備員,保険外交員,宅地建物取引業,旅行業などは、法律上定められた職業への就業が制限され,資格が使えない又は喪失してしまいます。ただし,免責が許可され,破産手続が終結しましたら,復権により資格制限が消滅します(破産法第255~256条)。
 個人再生手続では,資格制限がございませんので,個人再生手続が継続している期間中も資格を使って仕事をすることができます。
 そのため,上記のような破産手続において資格制限を受ける職業に就いている方は,個人再生手続に適しています。

 5 郵便物の転送に関する違い

 破産手続では,破産手続が継続している期間中は,ご自身宛の郵便物は全て破産管財人に転送され,財産の調査や財産の隠ぺい防止などを目的として破産管財人により開封,内容の調査がなされます(破産法第81条)。そのため,破産手続中は郵便物を破産管財人より受け取ることとなります。
 個人再生手続では,郵便物が転送されることはありませんので,ご自身で直接お受け取りできます。

 6 借金をした理由に対する取り扱いの違い

 破産手続において,債務全額の支払義務を免除してもらうためには,裁判所より免責を許可してもらう必要があります。パチンコや競馬などのギャンブルや高額な品物の購入などの必要以上な贅沢により債務を増やした,債務の返済ができなくなった後に財産を処分,隠匿したなどの免責不許可事由といわれる事由に該当していると,免責が許可されないことがあります。(破産法第252条)免責不許可事については,「★」で詳しく説明しておりますので,詳しくはこちらをご覧ください。
 一方,個人再生手続では免責不許可事由が定められていないため,破産手続における免責不許可事由に該当する事由があったとしても,認可される要件を満たしていれば,再生計画は認可されます
 そのため,免責不許可事由に該当する事由がある方は,個人再生手続に適しています。

第4 最後に

 以上に述べましたのは,一般論になりますので,個別の事案によって破産手続が適しているか,個人再生手続が適しているかは異なります。
 また,任意整理や特定調停などの他の手続が適している場合もございます。ご自身が考えられている他にも解決できる方法があるかもしれません。
 借金の返済にお困りの方,破産しようか迷われている方、債務整理について気になる方は,是非いかり法律事務所へご相談ください。一緒に解決の道を探しましょう。