【読むポイントここだけ】
この判決は,妊娠中の軽易業務転換を機になされた降格は,原則として強行法規たる男女雇用機会均等法9条3項に違反するが,例外として,①労働者の自由意思に基づく承諾を認め得る場合,または②業務上の必要性に基づく特段の事由を認め得る場合には,同項に違反しないと判断しました。

【事案の概要】
(1)病院に勤務していた女性は,管理者として副主任手当の支給を受けていた。
(2)女性は,妊娠したため,希望により負担の少ないリハビリ課に異動した。
(3)リハビリ課には,他の管理者がいたため,女性は副主任を免じられた。
(4)産休・育休後,異動前の職場に復帰したが,他に副主任がいたため,女性は再び副主任に任じられることはなかった。
(5)女性は,副主任手当の支払い及び不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償等の支払いを求めて提訴した。

第一審は請求棄却,控訴審も第一審の判断を支持

【判旨 判決の要約】破棄差戻し
(1)妊娠中の女性が,軽易業務への転換及び降格により受けた不利な影響の内容及び程度は,管理職の地位と手当等の喪失という重大なものである上,降格は女性の意向に反するものであった。そのため,女性の自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するということはできない。
(2)降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに業務上の必要性から支障があったか否か明らかではなく,男女雇用機会均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情の存在を認めることはできない。

【解説・ポイント】
本判決の示した判断枠組み(上述の①,②)は,軽易業務転換を契機とする降格の適法性に関するものですが,男女雇用機会均等法9条3項が規制対象とする他の不利益取扱いや育児介護休業法上の不利益取扱禁止規定の解釈にも影響を与える可能性があります。関連判例として,育児介護休業法上の短時間勤務による勤務時間の減少を賞与の支給要件として出勤率において欠勤扱いとすることは,育児介護休業法の権利保障の趣旨を実質的に失わせるほどの不利益を与える場合には,公序良俗違反として許されない,とした判例があります(学校法人東朋学園事件,最一小判H15.12.4労判862号14頁)。