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この判決は、政治的思想だけによっては職級、職位、資格及び査定の面でほかの従業員と差別的処遇を受けることがないという期待的利益を労働者は有し、この期待的利益は、法律上保護に値すると判断しました。

事案の概要

(1)会社は、共産党員又は同党支持者と認定した従業員に対して、賃金処遇等で差別的取扱いを行っていた。
(2)差別的取扱いを受けていた従業員が、会社に対して、不法行為に基づき、同期入社同学歴従業員の平均賃金との差額賃金及び差別全般による慰謝料などを請求した。

判旨・判決の要約 請求一部認容

(1)賃金処遇の妥当性

差別的取扱いを受けてきた従業員には勤務態度において消極的に評価される面もあるが特段重視するほどのもの、あるいは、その程度が著しいほどのものであったとは到底認め難く、賃金関係の処遇面で低い処遇を行ってきたという推定は覆されない。

(2)賃金格差の違法性

従業員は、政治的思想だけによっては職級、職位、資格及び査定の面でほかの従業員と差別的処遇を受けることができないという期待的利益を有し、この期待的利益は、法律上保護に値する。会社は、差別的取扱いを行ってきた従業員らの上記期待的利益を侵害した。

(3)損害の範囲

同期入社同学歴従業員の平均賃金との間に少なくとも3割程度の格差が認められる。差別的取扱いを受けてきた従業員は、差別された結果、社会的信用評価が損なわれ名誉感情も傷つき精神的苦痛を被っている

解説・ポイント

本件のような思想信条による賃金差別、あるいは人事処遇等での人格権の侵害は、違法性が強いとの認識が裁判官にはあるようです。そのため、同種の裁判例において、いずれもかなり高額な慰謝料請求が認容されています。

使用者が均等待遇原則に違反する差別的取り扱いを行えば、罰則(労基法119条1項)によって刑罰を科されるほか、その取扱いが法律行為(解雇、配置転換、懲戒処分)であれば強行法規違反として無効とされます。