かつては、会社や事業を売るM&Aについては、経営難に陥ったことによる「身売り」や、ハゲタカという言葉に象徴されるように「乗っ取り」といったイメージが強かったかもしれません。しかし、最近では、むしろ事業拡大・継続のため、相互のシナジー効果を狙って、さらなる成長戦略として利用されることも増えてきており、後継者問題を解決する手段として、会社や事業の売却が注目されています。
 売主にとっては、シナジー効果が期待できるのみならず、売却代金を得て借金弁済に充てることができることや廃業せずに従業員の雇用を守り、これまでの技術やノウハウを生かすことができて世間体も守れるというメリットがあります。
 法的には、 会社売却は株式譲渡契約、事業売却は事業譲渡契約という枠組みの中で実行していくことになります。
 売主側としては、急にハシゴを外されないようにし、会社や事業の価値を適正に評価してもらい買い叩かれることがないよう交渉を進めなければなりません。また、売主の負う表明保証責任の対象や範囲についても最新の注意を払う必要があります。
 このように売主として注意すべきポイントはたくさんありますが、多くの場合、買主の方が優位であり交渉が不利に持ち込まれることは少なくありません。M&Aの仲介業者や金融機関の担当部門が取り持ってくれることもありますが、買収の成否に利害関係を有しているため、残念ながら、中立ではなくいずれかに肩入れしている例もあるのが実情です。
 そのため、契約交渉段階から、売主側の完全な味方として、法律の専門家である弁護士に相談・依頼しておくことが慣用です。費用はかかりますが、結果的に、確実に売主の利益を守ることになります。
 会社や事業を売ることをご検討の際には、弁護士までご相談ください。