株主総会の開催 WEB・書面など活用

通常であれば普通決議の場合には,議決権行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席することで行われます。(会社法309条1項)

しかし,コロナで接触を控えたい今,株主総会の開催方法として,
1 物理的に出席しない方法での議決権行使を株主に促す方法
2 株主総会決議を省略する方法
3 インターネット等を利用して株主に出席してもらう方法

があります。

3の方法は,現行法上も可能ではありますが,現時点では1の方法をとり,株主に事前の議決権行使を積極的に促しながら,来場を控えるよう呼びかけることが適切な方法であると考えます株主が少数の会社であれば,2の方法も取りやすいかと思います。

注意! 1の方法をとる場合は,非公開会社であっても,招集通知の発送は,株主総会の日の2週間前までです!(会社法299条1項)

以下では,まず,1の方法をとった場合の株主への具体的な案内方法をご紹介し,次に,1~3のそれぞれの方法における留意点について解説していきます。

株主への案内(1の方法をとる場合)

(1) 株主総会の招集通知を発するに際して

① 議決権行使書面の記載方法,または,電磁的方法による議決権行使の方法を案内しましょう。

② 株主に対して,体調にかかわらず,「新型コロナウイルス感染症拡大防止のため」来場を見合わせるよう,明記しましょう。

(2) 会社のホームページ上

① 株主に対して,体調にかかわらず,「新型コロナウイルス感染症拡大防止のため」来場を見合わせるよう呼びかけましょう。来場を見合わせるよう明記した招集通知を,データでアップロードする方法も可能です。

② 来場した株主に対する来場記念品の配布や,送迎バスの運行を例年実施している場合は,それを中止するという判断も,来場する株主を最小限にする方法として非常に有効です。その場合は,株主に事前に公表・案内しておきましょう。

③ やむを得ず来場する株主に対しては,会場での感染症拡大防止策を講じること,その具体的な方法について案内し,理解を求めましょう。それにあわせて,情報の更新について随時確認してもらえるように案内しましょう。

(3) 株主総会当日(来場した株主への対応)

① 会場での感染症拡大防止策の具体的な方法及び,それについての理解を求めましょう。受付時の案内や,会場でのチラシ等の配布が有効だと思います。

 対策例:マスクの着用・手洗い・消毒のお願い,咳エチケットの呼びかけ,間隔を空けての席配置など 

 ※厚労省HP「感染症対策」はこちら 

② 来場した株主に対し,体調の確認や検温などを実施し,新型コロナウイルス感染症への罹患が疑われる株主の入場を制限したり,退場を促すことも可能です。これについても株主の理解を求めるようにしましょう。

ここからは,上記1~3のそれぞれの方法における留意点を解説していきます。

1 物理的に出席しない方法での議決権行使を株主に促す方法

株主が,以下の方法による議決権行使をすれば,出席した株主の議決権の数に算入される(会社法311条2項,312条3項)ため,定足数に算入できます。

①書面による議決権行使(会社法311条)

 株主が,議決権行使書面に必要事項を記載し,株式会社に提出することで議決権行使が可能となる方法です。

会社側が行うべき事項及び留意点は,以下のとおりです。

●株主総会の招集の決定に際して

取締役会(取締役会非設置会社については取締役)において,株主総会に(物理的に)出席しない株主が,書面による議決権行使ができる旨を定める必要があります。(会社法298条1項3号,4項)

●株主へ招集通知を発するに際して

非公開会社であっても,招集通知の発送は,株主総会の日の2週間前までです!(会社法299条1項)

・取締役会非設置会社であっても,書面で招集通知を発する必要があります。(会社法299条2項1号)※株主の承諾が得られる場合は,メール等の電磁的方法による通知が可能です。(会社法299条3項)

株主に対して,株主総会参考書類及び議決権行使書面を交付する必要があります。(会社法301条1項)※株主の承諾があれば,電磁的方法により提供することも可能です。 

 議決権行使書面のサンプルはこちらです

●株主による議決権行使がされた後

株主総会の日から3か月間,提出された議決権行使書面を株式会社の本店に備えおくことが必要です。(会社法311条3項)

②電磁的方法による議決権行使(会社法312条)

株主が,株式会社の承諾(※)を得て,議決権行使書面に記載すべき事項を,メール等の電磁的方法により株式会社に提供することで,議決権行使が可能となる方法です。

※株主総会の招集通知を発する方法につき,メール等の電磁的方法による通知でもよいと承諾している株主に対しては,正当な理由なく,②の方法による議決権行使を承諾することを拒んではいけません。(会社法312条2項)

会社側が行うべき事項及び留意点は,以下のとおりです。

●株主総会の招集の決定に際して

取締役会(取締役会非設置会社については取締役)において,株主総会に(物理的に)出席しない株主が,電磁的方法による議決権行使ができる旨を定める必要があります。(会社法298条1項4号,4項)

●株主へ招集通知を発するに際して

非公開会社であっても,招集通知の発送は,株主総会の日の2週間前までです!(会社法299条1項)

・取締役会非設置会社であっても,書面で招集通知を発する必要があります。(会社法299条2項1号)※株主の承諾が得られる場合は,メール等の電磁的方法による通知が可能です。(会社法299条3項)

・株主に対して,株主総会参考書類を交付する必要があります。(会社法302条1項)※株主の承諾があれば,電磁的方法により提供することも可能です。

・電磁的方法による招集通知に承諾した株主に対しては,議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供しなければなりません。(会社法302条3項)

●株主による議決権行使がされた後

株主総会の日から3か月間,株主から提供された事項を記録した電磁的記録を株式会社の本店に備えおく必要があります。(会社法311条3項)

2 株主総会決議を省略する方法

株主の全員の同意があれば,いわゆる,みなし決議をすることができます。株主総会の目的である事項を,取締役または株主が提案している場合,当該提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは,当該提案を可決する旨の株主総会決議があったものとみなされます。(会社法319条1項)

典型的には,提案の内容及びこれに同意する旨を記載した1通の書面に株主の全員が署名する場合(持ち回り決議)が考えられます。

会社が行うべき事項及び留意点は,以下のとおりです。

①同意書面等の取り扱い

・株主総会の決議があったものとみなされた日※から10年間,同意書面又は電磁的記録を,株式会社の本店に備え置く必要があります。(会社法319条2項)
・株式会社の営業時間内は,株主及び債権者による閲覧・謄写請求に対応できるようにしておく必要があります。(会社法319条3項)

②同意の意思表示がメール等の電磁的記録により行われた場合

 メールの本文に提案内容を記載して送信し、メールの本文に同意する旨を記載して返信をしてもらう方法や、㋑提案内容を記載した用紙のPDFを送信し、当該用紙のPDFに署名押印したものをPDFで返信してもらう方法などがあります。
 ただし,保管方法に注意が必要です。メールそのものや,メールで送ってもらった同意書のPDF等を,データにし,会社のサーバ内の記録として保管管理し,常時確認できるようにしておきましょう。①で述べた通り,データは10年間備置くことも必要です。

③議事録作成

・全員の同意により決議が省略された場合でも,書面又は電磁的記録をもって議事録を作成することは必要です。(会社法施行規則72条2項,4項1号)
・「決議があったものとみなされた日」※は,議決権を行使できる株主全員の同意の意思表示が会社に到達した日と考えられます。

3 インターネット等を利用して株主に出席してもらう方法

 現行の会社法上でも,株主総会の開催場所を設定したうえで,その会場に在所しない株主についてもインターネット等の手段を用いて出席させることは,可能とされています。
 なお,開催場所と株主との間で,情報伝達の双方向性と即時性が確保されていることが必要とされており,我が国での実施事例はあまりないです。
 したがって,この場合には,以下の点をふまえて,しっかり対策を整えたうえで行う必要があります。

①本人確認方法

事前に株主に送付する議決権行使書面等に,株主ごとのID・パスワード等を交付しておくなどの対応が必要です。

②通信障害への対策

株主の出席の機会,及び,開催場所と株主との間での情報伝達の双方向性と即時性を確保するため,会社側で通信障害が起こらないよう,あらかじめ対策を行うことが必要です。

③議決権の行使方法

 会社法上は,株主総会当日に,物理的にその開催場所に出席して議決権行使した場合と同様の扱いとなりますので,議決権行使が適切に行われるよう,会社側でシステムを整える必要があります。
 万が一,インターネット等の利用により議決権行使がうまくできなかった場合に備えて,(1)記載の事前の議決権行使を促したうえで,議決権行使の取り扱いについて決めておく必要があります。

④株主からの質問・動議の取り扱い

 インターネット等により株主が出席する場合,議長がそれらの株主の発言を逐一把握することは困難であると考えられるため,あらかじめ質問内容を記入してもらう方法をとることが有益となります。ただ,質問内容により質問を恣意的に選別するなどの議事運営がなされないよう留意が必要です。

⑤議事録の作成

 インターネット等で出席した株主の所在場所までは記載する必要はありませんが,出席方法として,開催場所と株主との間での情報伝達の双方向性と即時性が確保されている状況を基礎づける事実(ビデオ会議システム等の使用等)の記載をすることが必要となります。(会社法施行規則72条3項1号参照)

※参照 経産省HP 「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」

取締役会の開催 WEB・電話・書面決議の活用