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この裁判例は、雇用契約の準拠法について、当事者間に明示の合意がない場合には、契約内容など具体的事情を総合的に考慮して当事者の黙示の意思を推定するべきとしました。

事案の概要

(1) 日本国籍の客室乗務員は、ドイツに本社を置く航空会社に雇用されていた。
(2) 日本国籍の客室乗務員に対して、ドイツの客室乗務員にはない出費に対応する付加手当が支給されていた。
(3) ドイツでの課税範囲が縮減されたため、日本国籍の乗務員らの手取り額が増加した。
(4) 日本国籍の客室乗務員の手取り額が増加したため、付加手当の支給が撤回された。

判旨・判決の要約 請求棄却

(1) 雇用契約の準拠法について、当事者間に明示の合意がない場合には、契約内容など具体的事情を総合的に考慮して当事者の黙示の意思を推定するべきである。
(2) 本件雇用契約の内容など具体的事情を総合考慮すると、本件雇用契約の準拠法は、ドイツ法であるとの黙示の合意が成立していたものと推定することができる。
(3) 本件付加手当は、雇用契約の本質的要素に当たらない付加的給付にとどまり、撤回権の行使は「公正な裁量」(ドイツ民法315条)の範囲内にあり、有効である。

解説・ポイント

昨今の社会経済のグローバル化により、労働者又は使用者が外国(法)人である場合や、国外において労働関係が展開される場合など、国際的な労働紛争の処理を考える場面が増えてきています。
そのため、①そもそも日本の裁判所が管轄権を有するのかという点(国際裁判管轄)、及び②どの国の法律を適用するべきか(適用法規の決定)という点で問題となることに注意が必要です。