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事業承継ガイドライン20問20答

M&A取引における表明保証責任

表明保証とは

表明保証とは,契約の一方当事者が他方当事者に対して,当該契約の目的物等に関する所定の事実が,所定の時点でかつ正確である旨を表明し,保証するものをいう。

その機能は,リスク分配機能と法律効果の要件となる機能があり,結果として契約当事者に対して情報提供をうながす等の一定の作用を有する事になる。

表明保証の法的性質については,判例学説上確立した見解が示されている情況ではないが,瑕疵担保特約説と損害担保契約説とがあるとされているが,表明保証有情校および保証条項は損害担保契約であると整理することが妥当とされており,請求者において十分なデューディリジェンスを行うことができない場合であっても対象事業に係ると特定の事項に関するリスクを適正に分配できる点で上記リスク分配機能とも整合的であるとされる。

表明保証条項の概観

表明保証については,契約書上別紙として,売主による表明保証と買主による表明保証とがそれぞれされるのが通例である。

売主による表明保証の条項としては,1売主に関する表明保証,2対象会社グループに関する表明保証をする。

1売主に関する表明保証としては,設立および存続,本契約の締結および履行,強制執行可能性,法令等との抵触の不存在,許認可等の取得,倒産手続等の不存在,反社会的勢力,株式に対する権利などの事項についてなされる。

2対象会社グループに関する表明保証としては,設立および存続,対象会社の株式等,子会社・関連会社等,計算書類,重要な変更の不存在,会計帳簿,法令等の遵守,不動産,知的財産権,動産,在庫,債権,資産,契約等,人事労務,年金,公租公課,保険,環境,紛争,関連当事者取引,アドバイザリーフィー等の不存在,情報開示,反社会的勢力などの事項についてなされる。

これらの表明保証事項は,デューディリジェンスの事項とも重なるものである。

買主に関する表明保証としては,売主と同様に,設立および存続,本契約の締結および履行,強制執行可能性,法令等との抵触の不存在,許認可等の取得,倒産手続等の不存在,反社会的勢力,株式に対する権利などの事項についてなされる。

デューディリジェンス及び交渉における注意点

表名保証条項を規定した場合であっても,表明保証責任を巡る紛争が生じた場合,当該条項の文言から直ちに一定の結論が導き出されるわけではなく,当該条項の解釈や当てはめに関し,契約締結時における対象事業に関する契約当事者の認識及び具体的な表名保証条項を巡る交渉過程・内容などが問題となる。

買収者(買主)においては,デューディリジェンスにおいて開示をうけた資料に含まれる情報については,事後,契約相手(売主)に対して表明保証違反に基づき補償を求めることは困難であると認識しておく方が安全である。開示をうけた情報により明らかとなったリスクであっても,なお契約において,契約相手(売主)に責任を不たんさせたいと考える場合,別途特別補償条項等の規定を検討するべきであるといえる。

一方で,売主としては,対象事業の内容及び同事業に係る特定の事項に関するリスクの内容を改めて正確に把握しておくことが必要である。

M&Aにおいては,事後的紛争を回避するためにも,表明保証条項を巡る交渉においては,その交渉過程において可能な範囲で自己の意図や懸念事項を明確に表示しておくとともに,その交渉内容や経過を極力記録化しておくことが必要腕ある。具体的には,打合せの際の議事録の作成(状況によっては録音),文書やメールなど記録にのこる方法でのやりとりなどをすることを心がけるべきであるといえる。

表明保証に関する裁判例

東京地判平成19年7月26日 判例タイムズ1268号192頁

事業譲渡・事業承継に関する関与事例

経験事例1 歯科医院の事業譲渡事例(2018年)

 ⑴ 事案の概要

   複数の歯科医院を経営している医療法人がそのうちのひとつの医院をその医院長に譲渡するという事案で,契約書の作成・チェックの依頼を受けた。

   この件では,税理士さんが主導していて概ね事業譲渡契約書を作成していたので,それをチェックするというところから協力させて頂いた。

 ⑵ 経過

  • 事業譲渡契約書のチェック及び売手と買手との間でのコンサルティング契約書(売手がコンサル)の作成の依頼を受けた。
  • 契約書のチェックをし,コンサルティング契約書を作成した。ただ,このコンサルティング契約書は,売手の要望で,譲渡益を少なくして節税するためのもので,実質的には事業譲渡代金の分割払いの要素を含んでいたという特殊性があった。
  • 6月上旬に事業譲渡契約を締結したとの報告を受けた。債権債務の移転時期は基準時としていた。詳細の移転の目録までは記載がなかったためチェックしていなかった。
  • しかし,資産の移転がスムーズにいかず,売手・買手の間の信頼関係に亀裂が入って,資産の移転が難航。買手側がコンサルティング契約を解除する旨を言い出した。
  • 8月上旬,売手との間での資産譲渡の交渉のために,交渉の依頼として受任。
  • 売手にとっては,実態を伴わないコンサルティング契約としたことが不利に働くため,結局,同契約を解消することとして,改めて事業譲渡代金について協議の上,当初予定していた金額で覚書を取り直した。
  • その後,辞任をしたものの,細々とした費用の支払いについてやり取りをすることとなった。。。

 ⑶ 学んだこと

  • 契約書のチェック及び作成の難しさ
  • 相手に専門家がいないことによる難しさ
  • 細々した費用の負担についてチェックできていなかったこと及び免責条項を入れていなかったことによる煩わしさが生じてしまった。。。とはいえ,事業譲渡であることから,やむを得なかったとも思ってもいる。

 

 

 

 

経験事例2 株券発行会社なのに株券が存在していなかった事例(2018年頃)

⑴ 事案の概要

税理士さんの紹介で,買手側の依頼で,親族間での承継で契約書作成のみということで依頼を受けた。

株式の譲渡代金はすでに当事者間で決まっていた。弁護士において株式譲渡をするのに必要な契約書の作成及び税理士において株価の評価という役割分担で案件の処理に対応した。

売手側には事業譲渡の件で専門家はついておらず,顧問税理士,司法書士さんが助言をする程度だった。買手側が融資を受けることを前提にしていた。

依頼の趣旨としては,法的に有効な株式譲渡をすること,簡易的に判明できるリスクを調査することでした。

 ⑵ 経過

2018年

  • 8月下旬頃 株式譲渡契約書作成の相談・守秘義務
  • 9月末に依頼 買手会社訪問
  • 10~11月 売手会社訪問顔合わせ 資料提出依頼

     *ただ,定款,就業規則,決算書の他は,ほとんど資料を開示してもらえず,かつ,当事者の希望もあり,見ることができる売手会社の契約書も限られたものだった。ただし,買手担当者が一応確認。労務DDもなし。

  • 11月下旬 株券が発行されていないことが発覚。

かつ,COC条項「株主の変更の場合通知を要する」旨。

  • 12月上旬 株券不発行会社への変更
  • 12月中旬 COC条項の処理について売手・買手含めて協議。

2019年

  • 1月上旬 契約書の内容を売手側に説明

 *公平な契約書を作成していた。売主は特に意見することはなかった。

  • 1月中旬 クロージング 株式譲渡契約書の取り交し
  • その後,特に問題は発生していない。

 ⑶ 学んだこと

  • COC(Changeofcontrol)条項の処理の現実
  • 株券が発行されていない場合の処理

Ⅰ 株券不発行会社へ変更  Ⅱ 表明保証条項で対応

 

 

 

 

経験事例3 エステサロンの回数券が回収されていなかった事例(2012年頃)

 ⑴ 事案の概要

   化粧品等の販売を行っていた依頼者Aさんは,その顧客でエステサロンを経営していた相手Bから,2012年3月1日,譲渡代金200万円で,エステサロンS(店舗)の営業譲渡を受けた。営業譲渡を受けた時点では,DDなどを実施せず,契約書も覚書というタイトルの1枚紙のものでいい加減なものしか作成していなかった。Sは,回数券(チケット)の販売をしており,その残額が10万円程度であるとの説明を受けていた。しかし,実際に譲渡を受けた後に,チケットの残額を確認したところ,およそ80万円あることがわかった。そのため,幼馴染の弁護士である碇に相談をし,訴訟提起をすることした。

 ⑵ 訴訟の経過

  • 2012年12月27日付にて福岡簡易裁判所に訴訟提起

 表明保証がされていなかったことから,法的構成としては,営業譲渡契約に基づく付随的債務としての説明義務(信義則・民法1条2項)違反による不法行為に基づく損害賠償請求をすることとした。

 参考にした裁判例は,最高裁平成23年4月22日判決

  (要旨)契約の一方当事者が当該契約の締結に先立ち信義則上の説明義務に違反して,当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には,上記一方当事者は,相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき,不法行為による損害賠償責任を負うことがあるのは格別,当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはない。

  • 2013年2月8日付答弁書

Aは事前調査(DD)を十分にしていた,チケット販売のことは知っていたなどの主張がされた。つまり,説明義務違反はないということ。

  • 2013年8月7日付にて訴外で示談書を取り交わし,裁判を取り下げた。

 結果的に,依頼者Aが敷金相当額の事業譲渡代金70万円程度の未払があったので,こちらが20万円を支払うことで示談した。実質的に,50万円の損害賠償が認められる結果となった。

 ⑶ この事案から学んだこと

  • 事業譲渡を受ける前に相談をしてもらって契約書もきちんと作成すべきだということ
  • 表明保証条項がなくても損害賠償請求が可能であること。ただし,あるに越したことはない。
  • 万一契約書が作成されていなくとも,簿外債務があることがわかった場合,不法行為に基づく損害賠償請求が可能である。

 

 

経験事例4 典型的な事業譲渡の失敗事案だと思われる介護事業の譲渡事例

 ⑴ 事案の概要

   依頼者Kは,不動産業を営んでいるが,事業拡大のために介護事業に取り組むことにした。仲介をした会社の担当者との人間関係もあり,買い受けることを決めた。

   しかし,依頼者は,介護事業の基礎となる事業所(2つの事業所)の賃料を下げるという話が前提としてあったから購入することを決めたが,実際に賃料が下げられることはなかった。

   なお,受任経路は,同期の弁護士が利益相反の可能性があるということで,私が依頼を受けることになり訴訟を合計5件担当することになった。

 ⑵ 経過

  • 物件Ⅰの未払賃料請求訴訟 → 250万円の敗訴判決確定
  • 物件Ⅰの未払業務委託費900万円の支払請求訴訟 → 100万円の支払で和解
  • 物件Ⅰの未払業務委託費1500万円の支払請求訴訟 →全額長期分割払いの和解
  • 物件Ⅰの未払賃料・違約金1億5000万円,明渡請求訴訟(平成29年10月提訴)

 → 訴訟中に事業譲渡をして和解成立(平成31年4月)

解決金として500万円の支払。

  • 物件Ⅱの未払賃料支払及び明渡請求訴訟 

 → 1審で,和解を求めたものの原告が和解に応じず,完全敗訴判決

 → 原告は差し押さえ等をするも空振り

→ 2審で,約3000万円の支払をする内容で和解成立

  • 依頼者Kは表明保証義務違反で裁判をすることを検討中。損害合計額約5350万円

 ⑶ 学んだこと

  • 事業譲渡・承継には専門家の関与が必要だということ

経営コンサルを名乗る人に譲渡契約書の作成を依頼していたとのことであった。契約書作成費用200万円と聞いている。詳細は不明。

→専門家に法務DDの依頼をしておけば賃貸借契約関係について整理ができ,このような事態は避けられたと思われる。

  • 訴訟継続中に事業譲渡をしてしまうという難儀を成し遂げられたのは双方の当事者の理解と裁判所の協力があったから。