会社を続けるか,いつ辞めるか悩んでいませんか?破産・再生の実際は?

コロナ倒産の可能性

緊急事態宣言が出て,昨今のコロナウィルス感染予防のための営業自粛などに伴い,売り上げが激減してしまい,会社の資金繰りが悪化してしまっている事業者・会社が多数出てきていると思います。
そして,会社をこのまま続けて大丈夫か,今すぐにでも倒産,閉店してしまった方がいいのではないかとお悩みの方が多いと思います。
そこで,そのようなお悩みを少しでも解決するために,企業・事業者・会社の破産や再生の方法・実際をご説明させていただきます。
2020年8月時点では,給付金・補助金・融資などによって急場を凌げている企業が多いと思いますが,万一に備えて知識持っていいただいた方がいいことも追記しておきます。
2021年2月時点追記:1月の緊急事態宣言の発令及び2月の延長によって、事業者の方は経済的に窮地に立たされていて、破産申立などの清算手続きを検討されている方が多数います。弊所でもコロナの影響による破産手続の依頼を受けています。

再生・倒産の決断をするタイミングは?

実際は決断,相談が遅いことが多い

多くの事業者の方は,金融機関からの借入があり,従業員や事業所の賃料の支払いが毎月必要で,その他固定経費が多くかかっていると思います。

ほとんどの事業者の方は,月末の支払いが厳しいということに気付いてから,月の中頃に相談に来られることが多いです。また,会社で事業をしているが,会社の資金が不足して,個人の預貯金などを注ぎ込んだり,会社で借入ができないから個人で消費者金融から借入をして会社に注ぎ込んだりしたのちに,いよいよどうにもならなくなってから相談に来られることが多いです。
このように,いよいよ厳しくなってからだと,裁判所に納める費用や弁護士費用の捻出に苦慮される方も多くいらっしゃいます。

いつ弁護士に相談にいくか?

簡単に言えば,決断をする前です。
様々なご相談を受けてきた経験からすると,
1 資金繰りが悪化してきたと感じた時点で今後の資金繰り表を作成するなど見通しを立てて弁護士に相談をしておく
2 遅くとも月末の支払いができないという見込みが立った時点で速やかに弁護士に相談をする
3 株式会社など法人で事業をしている方は,できるだけ個人名義の資産は会社に注ぎ込む前に,どうするべきかを弁護士に相談をする
ということが必要だと思います。

※注意を要するのは,特定の債権者(たとえば,親族や友人など)に対してのみ迷惑をかけたくないと考えて,返済をしてしまうと,破産などの手続きを取る際に問題となってしまうので,弁護士に相談をした上で,返済をすべきかどうかも検討すべきだといえます。

コロナウィルスの影響を踏まえると

様々な借入制度の活用,持続化補助金,雇用調整助成金などの活用も検討すべきということになります。
しかし,借入をした場合には,先々返済をしなければならなくなることも考えておかなければなりません。とはいえ,今現時点では,ひとまず,これらの制度を活用して,急場を凌ぐことが大切です。
その上で,将来的に資金繰りが悪化して,返済が困難になった場合に,どのように対応をすべきか知っておく必要はあります。
また,これまでの実績や今後の見通しを踏まえて,個人資産などを投下する前に,会社を倒産させることも経営戦略の選択肢の一つにいれて検討をするべきだと思います。

まずは借金(負債)と資産の整理・把握をする。

資産と負債の整理をする方法

申告書類・試算表の確認

資産と負債を整理する効率的な方法は,まずは,確定申告書類を確認することです。
その上で,具体的に資産と負債をそれぞれ別のA4の紙でもなんでもいいので書き出すことです。ただ,確定申告書類には事業に関するものしか載っていませんし,粉飾されていることもあります。
次に,個人的な借入や補償の有無なども分けて書き出してみることです。
そうやって,まずは現在の資産と負債の状況を把握する必要があります。
そして,資産に関しては簿価と実際の換価価値が異なることもありますが,売却可能な資産がないかあればその売却を検討をし,無担保の不動産があればそれに担保権を設定して資金調達できないかを検討してみます。また未回収となっている売掛金があればその回収の可否を検討する必要があります。
負債に関しては,金融機関からの借入と取引上の債務を分けて整理します。

会社と個人の資産・負債を分けて考える

今やっている事業を自営業者として個人でやっているのか,株式会社などの法人でやっているのかという点を分けて,個人と法人で分けて整理をする必要があります。
まず,自営業者としてやっている場合は,個人名義の自宅や預貯金などの個人資産まで金融機関などの債権者に引き当てとされる,つまり持っていかれる可能性があるという点が大きく異なります。
一方で,法人で事業をしている場合は,基本的には個人資産は持っていかれません。ただ,個人保証をしていることがほとんどだと思いますので,個人保証をしている場合には,自営業者の方と大きく異なるところはありません。

長期未払いなどは消滅時効の可能性も。

財産関係の整理をしたときに,長期未収となっている売掛金や長期未払いとなっている買掛金があれば,その回収や支払いの要否を検討する必要があります。

未収の売掛金の回収

長期未収となっている売掛金であっても,消滅時効にかかっていなければ,その回収ができないかを検討しましょう。回収の可否の判断のポイントは,法的に正当に成立している権利なのか,相手の資力(支払い能力)があるか,という点です。

長期未払いの買掛金

しばらくの間支払いをしていないが,帳簿上残っている負債(未払いの買掛金)がある場合や突然請求がきたが最後の支払いから5年以上経っているといった場合には,消滅時効の援用によって,その支払いを免れることができないかを検討する必要があります。

利益は出ているが返済が困難なら民事再生手続きもできる!

リスケ・融資

会社の売り上げは順調で利益は出ているけど,急場凌ぎで借り入れたその借入金の返済が困難になった場合には,金融機関との交渉をして利息だけの返済にしたり,返済額を減らしたりすることが考えられます。
しかし,それでは,結局,返済元金は減らず,長期間経営を圧迫することにもなります。

借金の減免を受ける

そこで,知っておきたい会社の継続のための法律上の手段をご紹介します。それは,民事再生手続きというものです。
個人の場合
会社ではなく個人(自然人)の場合には,自宅があってある程度安定した収入があるときは,小規模個人再生や給与所得者等再生手続きを利用することが考えられます。
会社の場合
会社の場合には,民事再生手続きをとることになりますが,どのようなメリットがあるかというと,金融機関の借入を大幅に減額することができるという点です。ただ,取引先なども巻き込むことになるので,取引先の理解をえることができるか,または別の取引先を見つけることができるのかというところが,利用の障害になっているという実情があります。逆にいえば,取引先に対する未払い分も含めて減免を受けることができるので,取引先に対する長期滞納・未払いがあり,関係性も特に重要視する必要がないということであれば,民事再生手続きをお勧めできます。

密かに会社を蘇らせる特定調停スキーム

民事再生手続きは,どうしても取引先を巻き込んでしまう,取引に知られてしまう可能性が高いのですが,中小企業を対象とした特定調停スキームというものを利用すれば,取引先には知られることなく,借入金の減免を受けることが可能になります。
特定調停制度では,弁護士のサポートのもとに再生計画案を策定して,金融機関を相手として交渉を行った上で,特定調停の申立をして,債務の減免を受けることを目的としたのです。
全国的に利用が進んでいるとは言い難い状況にはありますが,借金の返済・金融債務の支払いが経営を圧迫しているが,取引債務の支払いに問題はなく,借金の支払いを除けば利益が出ているという状態の会社は,是非,この特定調停スキームの利用をすることをお勧めします。なお,詳細はまた別の記事で解説しようと思いますが,日本弁護士連合会の特定調停スキーム利用の手引きという専門家向けの資料が有用です。

廃業・破産という選択をするには?

そもそも破産手続きをとならないとダメ?

事実上の倒産

事実上の倒産って聞いたことありますか?
これは,会社の資産・負債の整理をせずに,放置をしてしまうということです。
一般社会的にみると,ある意味では無責任な対応であり,責められるべきことかもしれません。
ただ,破産手続をとるにあたっても,申立弁護士費用の他,裁判所に納める費用がかかることから,その費用さえも捻出できないときには,このような事態になることがあります。

費用をかけても破産手続きをとるべき理由

破産手続きをとらない場合,債権者からの取り立てや裁判所からの訴状が届くなど平穏な生活を送ることができないだけでなく,自分名義で収入を得ているといつ差し押さえがくるかとビクビクしなければならないし,自分の名義での資産形成もその結果難しいということになります。
したがって,もし借金や買掛金の支払いができない状態で廃業をするのであれば,破産手続きをとるべきであるといえます。

破産手続きをとるのに必要な資料

破産手続開始申立をするために,裁判所に提出をする資料は多岐にわたりますが,その申立をすべきかどうかを検討する際には,
①過去3期分の確定申告書と②当期の試算表
があれば,ひとまず相談対応の際に,一歩進んだアドバイスをさせていただくことが可能です。

破産にはどれくらいの期間がかかる?

破産手続きをとることを決めたら,特に障害がなければ,3〜6ヶ月以内に破産手続き開始申立をすることになります。トータルでは,概ね1年前後はかかると思ってください。

1
申立準備〜申立 1〜6ヶ月

受任通知を発送し,負債の調査をするとともに,申し立ての際に必要な資料及申立書を準備します。ただ,密行性を要する事案では受任通知の発送はしません。

2
申立〜破産手続開始決定 2週間前後

破産手続開始の申立をしたときには,裁判所と破産管財人候補者の意向によって,事前に三者協議といって,申立人,破産管財人候補者,裁判所の3者で事前の打ち合わせが行われます。

3
開始決定〜終結 3ヶ月〜

破産手続開始決定がされたら,同時に第1回目の債権者集会期日が指定されます。当初より配当が見込まれる案件であれば破産債権の調査が行われます。終結までの期間は,会社で6〜12ヶ月以上はかかります。

破産によるデメリットは?

法人の破産によるデメリット

法人破産をした場合には,法人自体の信用が落ちるのみならず,その代表者の信用も落ちると言えます。
法人はなくなることになるので,当然,従業員を解雇することになりますし,残される代表者は再び会社を作ってすぐに借入をするとしても難しいなどというデメリットがあります。
しかし,もっとも気になるのは,個人破産の場合のデメリットでしょう。

個人の破産によるデメリットの例

破産手続中
住居が制限される
郵便物が全て回付(管財人へ)される
様々な資格制限がある
破産手続終了後
当面,クレジットカードが作れない
当面借入ができない。
7年間は再び免責を受けることができない

破産手続きに必要な費用はいくら?

破産手続きにかかる主な費用は,申立代理人弁護士の費用と裁判所に納める破産管財人の費用となります。事業者の方でこれらの資金が準備できない場合でも資産を換価するなどして捻出できることもありますので、費用のことはひとまず置いておいて、初回無料法律相談をご利用ください。

個人(非事業者)

300,000円(税別)

上記の他に,実費として2〜3万円,破産管財人がつく場合+20万円が必要となります。

  • 目安期間6ヶ月

事業者(個人)

500,000円(税別)

上記の他に,実費2〜3万円,破産管財人の費用として20万円〜が必要になります。

会社

1,000,000円(税別)〜

上記の他に,実費3〜5万円程度,破産管財人の費用として50万円〜が必要になります。

弁護士に依頼をしないとダメか?

もちろん,弁護士に依頼をせずに,自分でやってみるということもできなくはありません。
しかし,自分で家を一から建てていくような作業になりますので,途中で投げ出したくなったり,家が崩落したりすることがあるでしょう。
というのも,破産手続き開始申立に関しては,多くの事務作業が生じるとともに,高度な法的判断が必要な場面が多くあるからです。結局弁護士に依頼することになると思います。
そのため,破産手続き開始申立については,弁護士に依頼をしなければならないといっても過言ではないと思います。

悩む前に弁護士に相談を!

一人で悩むよりも思い切って電話をして相談をしてみてください。当然,守秘義務がありますので外部に知られることはありません。
コロナウィルス対策関連の借入・助成金のご案内もさせていただいておりますが,今後は,事業の再生をするか,廃業をするかなど判断に悩まれる方が多く出てくると思っています。
色々と書かせていただきましたが、現状を正しく把握し、事業継続か、清算かなどどのような方針をとるかを判断するのが経営者の役割とはいえ、弁護士などの専門家の助言を得ずに判断するのは困難です。
そのため,弁護士法人いかり法律事務所では,初回に限ってということになってしまいますが,無料で,事業者のこれらのご相談対応をさせていただくこととしております