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 この判決は、使用者がその事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を被った場合には、使用者は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において被用者に対し損害の賠償又は求償の請求ができると判断しました。

事案の概要

(1)自動車運転手として雇われていた従業員が、会社所有の大型貨物自動車を、被害車両に追突し、事故を発生させた。
(2)会社は、被害車両の所有者に修理費用等を支払った。
(3)会社は、事故を起こした従業員に対して、会社が被った損害額の求償を行った。

第一審及び控訴審共に会社の請求を一部認容

判旨・判決の要約 上告棄却

 使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において被用者に対し損害の賠償又は求償の請求をすることができる

解説・ポイント

 本判決を受け、その後の下級審は労働者の責任制限の基準として、労働者の帰責性(故意・過失の有無・程度)、労働者の地位・職務内容・労働条件、損害発生に対する使用者の寄与度(指示内容の適否、保険加入による事故予防・リスク分散の有無等)を考慮し、責任を否定したり、認めても2分の1から4分の1程度にとどめるものが多くなっています。