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 この判決は、労働契約の付随的業務として、降灰除去作業には必要性があり、社会通念上相当な程度を超える過酷な業務ともいえず、職場管理上やむを得ず、殊更職員に不利益を課すという不当な目的もないことから、降灰除去作業を課す業務命令は適法と判断しました。

事案の概要

(1)会社は、職員に対して、勤務時間中のワッペン等の着用や氏名札と着用場所が競合する組合員バッジの着用を禁止していた。
(2)会社は、職員に対して組合員バッジの取外しを命じたが職員はこれに従わなかった。そのため、会社は、職員に対して降灰除去作業に従事するよう業務命令を行った。
(3)職員は、降灰除去の作業中、作業状況を監視され、給水を制止されるなどした。
(4)職員は、本件作業命令は懲罰的な報復であり、不法行為に当たるとして損害賠償を請求した。

第一審及び控訴審ともに職員の請求を認容

判旨・判決の要約 破棄自判(職員の請求を棄却)

 降灰除去作業は、職場環境の整備のために必要な作業であり、社会通念上相当な程度を超える過酷な業務に当たらない
 組合員バッジを着用したまま業務に就くという違反行為を行ったことから、降灰除去作業に従事させたことは、職務管理上やむを得ない措置ということができ、違法、不当な目的でされたものとは認められない
 給水を制止した行為も特に違法あるいは不当とはいえない。

解説・ポイント

 業務命令権が労働契約の範囲内にあるとしても、組合所属、思想、性別等を理由とする差別的な業務命令のように、強行法規違反や懲罰目的、人格権侵害など業務命令権の行使が濫用に当たる場合には不法行為責任などが生じるので注意が必要です。