ハラスメント対策をご検討の方、ハラスメント相談窓口・通報窓口の設置を検討されている担当者の方や代表者の方を対象として、外部窓口設置サービスをご紹介させて頂きます。すべての相談・通報に対して弁護士による簡易助言指導をつけて報告します。なお、詳細な報告希望にも対応します。
2021年11月25日 無料WEBセミナー開催!ハラスメント対策・改正パワハラ防止法のポイント
2022年4月1日よりハラスメント対策の義務化がされることになっており、多くの企業の方が窓口の設置及び運用に関してお悩みがあると思い、無料セミナーを開催することとしました。詳細は、こちらよりご確認ください
※2021年5月10日追記
これまで弊所の本体サイトで一つの記事として展開していましたが、ハラスメント対策の重要性が増してきたことから、ハラスメント、公益通報などの外部窓口サービスにより一層力を入れていくことにしました。
人事労務担当者や経営者の方の、窓口業務を外部に委託したい、適切に対応するために弁護士事務所に外注したいというニーズにお答えします。そこで、以下のとおり専門サイトを作成しましたので、こちらもあわせてご確認ください。サービス内容で記載に齟齬がある場合専門サイトの内容が優先します。
このページの目次
- 1 2021年11月25日 無料WEBセミナー開催!ハラスメント対策・改正パワハラ防止法のポイント
- 2 ハラスメント・内部通報社外窓口サービス 専門サイトの設置(ハラスメント対策)
- 3 法改正によりハラスメント対策が義務に。
- 4 ハラスメント外部窓口を設置するメリット
- 5 ハラスメント外部窓口サービス
- 6 ハラスメント相談窓口の活用方法
- 7 ハラスメント・公益通報/受付内容・方法
- 8 通報・相談受付(運用)の流れ
- 9 弁護士法人による運営の強み
- 10 お問い合わせ〜契約まで
- 11 サービスと料金設定
- 12 窓口設置ケース
- 13 ハラスメント受付・対応実績
- 14 お問い合わせ方法
- 15 お問い合わせフォーム
- 16 ハラスメント相談窓口とは何か~パワハラ対策ガイドラインから~
- 17 顧問弁護士とハラスメント相談窓口
- 18 弁護士・法律事務所に社外窓口を外部委託するメリット
- 19 民間企業ではなく弁護士法人に依頼するメリット
- 20 グループ会社の相談窓口設置
- 21 ハラスメント相談窓口の設置費用の相場
- 22 東京都からハラスメント窓口を東京以外の弁護士に外部委託するメリット
- 23 ハラスメント相談窓口の運用フロー・流れ
- 24 ハラスメント対策の就業規則・規程例
- 25 ハラスメント対策 トップメッセージ
- 26 ハラスメント対策 マニュアル例・フロー
- 27 ハラスメント対策 アンケートの実施・アンケート例
- 28 ハラスメント対策 相談・聴取
- 29 ハラスメント対応 事実確認・調査・事実認定(証拠)の方法
- 30 ハラスメント対応 配置転換・懲戒処分など(事後の適切な対応)
- 31 ハラスメント相談窓口担当者のための研修
- 32 ハラスメント対策・パワハラ対策のポイント
- 33 ハラスメントとは?種類と対応策
- 34 業種別 パワハラ・ハラスメント対策・窓口対応
- 35 パワハラ対策指針・ガイドラインのポイント
- 36 パワーハラスメント・パワハラとは?
- 37 パワハラ・パワーハラスメントの具体的事例
- 38 パワハラ対策・法律上の義務として執るべき対策
- 39 パワハラ対策として望ましい取り組み(義務ではないがやるべきこと)
ハラスメント・内部通報社外窓口サービス 専門サイトの設置(ハラスメント対策)
弊所では、ハラスメント相談窓口、公益通報・内部通報窓口の外部委託サービスを展開しております。今後も重要性が増すものと考えて、以下のとおり、専門サイトを制作しておりますので、一度ご覧ください。
法改正によりハラスメント対策が義務に。
1.パワハラ防止法改正によるハラスメント相談窓口設置の義務化
パワハラは、働く⼈が能⼒を⼗分に発揮することの妨げになることはもちろん、企業にとっても、職場秩序の乱れや業務への支障が生じたり、貴重な⼈材の損失につながり、社会的評価にも悪影響を与えかねない大きな問題です。
そのような背景から,2020年6月1日より、 改正労働施策総合推進法(通称:「パワハラ防止法」)が施行されて、従来から義務化されているセクハラ・マタハラに加えて,パワハラについても相談窓口の設置などのパワハラ対策が義務化されることとなりました。
上記改正により,パワハラ防止法は,職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることを事業主の法律上の義務としています。中小企業については,当面は努力義務ですが,2022年4月より義務化されます。
具体的には,
① 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発し
② 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
が求めらえれます。この一環として,相談窓口を設置して労働者に周知することや,相談窓口の担当者が相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすることが求められます。
2.セクハラ・マタハラ相談窓口の設置
セクシャルハラスメントもパワハラと同様に、従業員と企業に大きな悪影響を与えるものです。そのため、男女雇用機会均等法において、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、厚生労働大臣の指針により相談窓口の設置が義務づけられています。その窓口を、外部の機関に相談への対応を委託することで義務を果たしたことになります。
ハラスメントの統一的な通報窓口を設置することが推奨されています。
3.公益通報・内部通報の外部窓口(コンプライアンス)
会社及び従業員の法令違反行為は、企業価値を損ねるものであり、企業経営に重大な悪影響を与えかねません。一方で内部通報窓口を設けることで、重大な違法行為の抑止と早期発見が可能になり、企業価値の向上と業績の改善を図ることができます。
消費者庁が2016年に発表したガイドラインでは,コンプライアンス通報窓口を設置することが望ましいとの指針が示されています。法令遵守を重視している企業などはすでに設置しています。
ハラスメント外部窓口を設置するメリット
1 身内(社内)ではなく外部に専門家を置くことがハラスメント対策の第一歩
ハラスメントや違法行為などの通報窓口を社内に設置したとしても、そもそも社内の窓口だと匿名性が保てない、通報してもあの上司が判断するなら何も変わらない、そうやって従業員は通報を諦めます。外部の窓口であれば通報をしやすい環境の確保ができます。揉み消される心配がなくなります。さらに専門家のアドバイスがあれば、より良い会社へ急成長します。
2 小さな問題を発見し対処。本当の外部に行かれる前に。
もし通報窓口がなかったら、社内窓口で適切な対応がされなかったら、被害を受けた人、違法行為を目撃した人は、どうするでしょうか。マスコミ、裁判、労働基準監督署等に助けを求めるでしょう。適切に対応できる窓口があれば、大きな問題になる前に解決へ向かうことができます。
3 社員のコンプライアンス意識の向上に。
悪いことをしたら叱られる。仲間を大切にする。当たり前のことを忘れてしまいそうな従業員に適度な緊張感をもってもらう。そのために、外部窓口が機能します。外部窓口があることで、管理職、上司はハラスメントをしないように気をつけ、目が届き難い最前線の従業員はコンプライアンスを意識して仕事に取り組むようになります。
4 会社の社会的信頼が向上する。
外部窓口設置により,ハラスメントなどに対する問題に対する自浄作用があること,社員のコンプライアンス意識の向上が図られていることを,取引先、社会に示すことができます。大きな社会的な信頼を得ることができるといえます。
ハラスメント外部窓口サービス
1. ハラスメント窓口は法律の専門家である法律事務所が対応
法律事務所の職員が対応をするだけでなく、事案や必要に応じて弁護士がフォローをしますので、安心です。何より、弁護士事務所をハラスメント対策として外部窓口にできるメリットは大きいといえます。コールセンターのスタッフが対応する窓口との差は歴然としています。
2.すべての通報・相談に専門家である弁護士による指導助言付き!
弁護士法人が運営するハラスメント・公益通報社外窓口サービスであるアンカーラインでは、すべての通報・相談に対して、その後の対応方法などについて専門家である弁護士による指導助言を付けます。民間企業が運営する窓口との差は圧倒的なものです。
3.従業員の窓口ダイヤルをご用意※
従業員からの相談窓口ダイヤルを設置します。相談窓口ダイヤルは共通ダイヤルを基本としますが,ご希望に応じて会社専用ダイヤルを設置することも可能です。全件録音して記録を残すので安心です。
※ご希望に応じて見積もります。
4.全国どこの企業様も利用可能
WEB会議システム・メールなどの活用により,全国どこの企業でも利用可能です。ご希望に応じて,専用WEBページを設置させていただきます。
また,全国どこでも,ZOOM,GoogleMEETなどの利用により,相対・面談に近い形で相談を受けることが出来ます。
ハラスメント相談窓口の活用方法
1.セカンドオピニオンとしての活用もできる
すでに顧問弁護士がいる会社でもご利用可能です。外部窓口に通報があった内容については対応策のセカンドオピニオンとして活用することもできます。なお,オプションの顧問契約を加えれば,日常的な相談対応も可能です。
2.内部窓口に来たハラスメント事案も相談可能(※)
ハラスメント対策としてはより通報しやすい環境を整えるために、外部窓口だけでなく、内部窓口を設ける企業もあります。会社内部で受けた通報にも適切に対応する必要がありますが、専門家の助言を受けて対応できるので安心です。
*ハラスメントサポートプランをご契約の場合
ハラスメント・公益通報/受付内容・方法
1.窓口でお受けする内容に限定はありません。
従業員の方からお受けする窓口での通報・相談内容について限定はありません。ハラスメントや法令違反等の通報窓口として機能します。
通報・相談内容 | 受付 | 従業員に対する対応 | 会社への報告 |
ハラスメント | 〇 | 聴取等による確認 | 〇 |
コンプライアンス違反 | 〇 | 同上 | 〇 |
※ハラスメントや法令違反などの通報である場合には,事実関係の確認を行い会社に報告及び指導助言させて頂きます。これによって労働者の利益を確保し,かつ,会社の利益が損ねられることを予防します。なお,労働者に意見・法的助言をすることはできません。
2.受付方法も多彩・多様
複数の通報手段を設けることで、従業員の方が通報をしやすい環境を整えます。これによって会社の労働環境が改善されることを目指します。
専用のWEBフォームをご用意いたします。匿名性を保ちたい場合には有用です。
電話での聴取をさせて頂きます。研修を受けた事務職員が対応するだけでなく、難しい通報は弁護士がフォローしますので安心です。
気軽に証拠資料を送りたいとき、情報を整理して送りたいときには有用な手段ですので、通報を容易にします。
WEBやメールなどになじまない方への対応も考えて郵送での受付もしております。書式を問わず受け付けます。
3.通報・相談の対象者は全従業員とその家族と取引先
貴社従業員であれば誰でも,匿名でも可能です。通報や相談者を限定すると、外部相談窓口を設置したメリットが減ってしまいますので、弊所では通報者・相談者の限定をしておりません。また、従業員の家族や取引先も対象とすることでより実効性の高い通報システムを目指しています。なお、ご希望に応じて対象範囲を決定します。
通報・相談受付(運用)の流れ
1 外部窓口での受付(従業員→法律事務所)に相談・通報
2 電話の場合法律事務職員による聴取
3 一次報告
外部窓口に連絡が入った場合は,聴取対応後,速やかに一次報告をします。
4 弁護士作成の簡易報告書での報告
まずは簡易的な助言指導を付した報告をさせて頂きます。
その後、ご要望に応じて、当該案件について助言・指導(従量課金)をさせて頂きます。サポートプランご契約の場合、追加料金がかかりません。
5 会社での対応(報告書を踏まえた対応を実施していただきます。)
6 会社から従業員(または法律事務所)へ対応結果の報告
*通報内容に関する継続的な相談をご希望の場合は、サポートプランのご契約をお願いしております。
弁護士法人による運営の強み
1.弁護士法人をハラスメント相談窓口にできる優位性。
まず、何より、弁護士法人をハラスメント対策の通報窓口としておくことができるということです。これは対外的にはコンプライアンス意識が高いことを示すことができ、かつ、実質的にもハラスメント対策指針が求める迅速な対応を可能とするものです。弁護士法人・法律事務所だからこそ、できるサービスです。
2.ハラスメント事案に対する弁護士による助言指導
専門家である弁護士が、従業員から聴取した事項を踏まえて、コンプライアンス・労働法の観点から、会社として対応すべき事項についてアドバイスをします。
3.弁護士法人が運営する信頼性
民間企業でもなく,1人事務所でもない,複数の弁護士とスタッフが常駐する弁護士法人による運営です。事務所内で研修を実施し、毎月、定例の会議において情報共有を行いPDCAによるより良いサービスを目指しています。
受付時間 | 受付対応 | 法的助言 | 弁護士による指導 | 費用 | |
---|---|---|---|---|---|
社内 | ○ | ○ | △ | △ | ◎ |
民間企業 | ○ | △コールセンター | ×伝言のみ | ×法的助言ができない | △結局高くつく |
いかり法律事務所 | ◎ | ◎ 弁護士対応 | ◎ 弁護士が助言 | ◎ 弁護士による指導 | ○ |
お問い合わせ〜契約まで
1 お問合せ(無料)
お問い合わせ・ご相談は,無料です。
2 相談対応・打ち合わせ(無料)
日時を調整させていただき,打合せをさせて頂きます。
3 お見積もり(無料)
打合せをさせて頂いた上で,貴社の要望と規模に合わせたお見積もりをさせて頂きます。
4 契約締結
外部窓口サービスの契約を締結させていただきます。
*ご契約後導入まで最短で14日
*簡単なハラスメント防止規程,従業員に向けたトップメッセージ,運用マニュアル(簡易)を用意させていただきます。
*なお,就業規則の作成・根本的な改訂が必要な場合は,社会保険労務士をご紹介させていただきます。
*運用開始後,1年を目安に,外部窓口の周知や運用状況の確認をさせて頂く予定です。
サービスと料金設定
以下については、参考です。導入相談及びお見積もりは無料で対応させて頂きますので、お気軽にお問い合わせください。
1.最低料金16,500円~気軽に設置できる相談窓口設置
月額1万6500円〜
*簡易な法的助言付き
具体的には、相談・通報内容に応じて、①ハラスメント該当の可能性及び②その後に取るべき対応などをご案内させて頂きます。
*サポートプラン以外は個別対応として詳細な調査・報告等を行う場合についてはこれに含まれませんので,別途お見積もりをさせていただきます。
2.ハラスメントサポートプラン55,000円
社内の窓口の運用や社内通報の対応について助言が欲しい、通報内容に関する継続相談を希望する方は、別途、ハラスメントサポートプランを準備しています。
*既に弁護士との顧問契約をされている方でも,セカンドオピニオンが欲しい,業務分野によって使い分けたいという場合,このオプションでのご契約をお勧めいたします。
ハラスメント問題以外の相談をご希望の場合は、別途顧問契約をお申し込みください。
3.研修オプション(導入時研修,定期的研修)
1年間を通じて、ご契約いただいている企業を対象として、ハラスメント相談窓口対応、ハラスメント事案対応に関する研修を実施する予定としております。
別途社内での従業員向けの研修をご希望の場合は、お申し付けください。
※目安の金額です。
研修 | 料金 | 時間 |
窓口導入研修 | 50,000円 | 60分 |
ハラスメント研修 | 100,000円 | 90分 |
コンプライアンス研修 | 100,000円 | 90分 |
その他 | 100,000円~ | ご相談 |
*上記金額はあくまでも目安であり,詳細は研修内容や時間等に応じて別途お見積もりさせていただきます。
窓口設置ケース
ハラスメント受付・対応実績
現在準備中です。
労働問題の対応実績は、こちらをご参照ください。一部のみ掲載。
お問い合わせ方法
1.メールにてお問い合わせ
まずはメールをお送りください。
WEBからメールフォームで問い合わせをお願いします。
2.打合せ日程調整
弊所より次に打ち合わせの日程調整をさせていただきます。
3.導入のオンライン相談(WEB会議)
直接対面式での相談の他、WEBでの相談対応もできます。全国から相談に対応できるように、弊所ではWEB会議システム(ズーム、ハングアウトミートなど)の利用が可能です。
お問い合わせフォーム
是非、お気軽に問合せ下さい。
※取得した情報の利用目的:お問い合わせの回答などハラスメント相談窓口のサービスのご案内のみとします。
ハラスメント相談窓口とは何か~パワハラ対策ガイドラインから~
ハラスメント対策ガイドライン等は、相談窓口の設置を求めていますが、それはあくまでも会社の費用で運用されることが前提となっており、かつ、あくまで会社の一つの機関という位置づけになります。そのため、当該労働者から企業へ提供された情報については、会社が当該労働者との裁判などのトラブルにおいて利用しても構わないという位置づけになります。
しかし、パワハラ対策法等は、当該労働者のプライバシー保護を求めていますので、当該労働者からの相談内容や通報内容の取扱いに当たっては、企業は利用していいいがその情報に触れる人員を限定するなどプライバシー保護を図る必要があるといえます。
また、パワハラ対策法等は、当該労働者が相談や通報をしたことを理由とする不利益取り扱いを禁止しています。そのため一見すると当該労働者から提供された情報を当該労働者の不利益に利用することが禁止されていると勘違いをしそうになるのですが、それは違うと考えています。つまり、あくまでもパワハラ対策法等は、「相談や通報をしたこと」を理由とする不利益取り扱いを禁止しているのみであって、そこで提供された情報をどのように使うかまでは言及していませんので、当該労働者から提供された情報を当該労働者の不利益に利用することもできるのです。
顧問弁護士とハラスメント相談窓口
ハラスメント対策を考えている企業の多くは、コンプライアンス意識も高く、すでに弁護士と顧問契約をして日常的な法律問題に対する助言指導を受けていると思います。そのため、顧問弁護士がいる場合には、顧問契約とセットで合わせてその顧問弁護士に、ハラスメント・コンプライアンスの相談・通報をその顧問弁護士に外部委託するという方法が簡便で費用も抑えられることもあります。
実際に、いかり法律事務所でも、顧問契約をして頂いている企業様より外部窓口としての対応の委託を受けています。
一方で、私が弁護士同士の勉強会でハラスメント相談窓口対応に関する安全配慮義務違反が問われた事例を発表した際に、他の弁護士にアンケートを取る趣旨で尋ねたところ、「顧問弁護士をしている企業のハラスメント相談窓口は受けない」という弁護士もいました。
当該企業の顧問をしている弁護士がハラスメント相談窓口の委託を受けるということになると悩ましい問題が発生します。それは、利益相反です。
企業と労働者は、雇用関係においては対立することが多く、そのために労働者から相談を受けた後に、その労働者と企業との間で紛争となったときには、弁護士としては、既に労働者から相談を受けてしまった以上、その相談を受けた件について企業の代理をするとなれば利益相反になるのではないか?といったものです。その疑問は、半分あたっていて半分外れているといえます。
ハラスメント対策を定めたハラスメント防止法及びハラスメント対策ガイドラインを読み解き、その仕組みを考えることで一つの答えが出せると思います。
ハラスメント対策ガイドライン等は、相談窓口の設置を求めていますが、それはあくまでも会社の費用で運用されることが前提となっており、かつ、あくまで会社の一つの機関という位置づけになります。そのため、当該労働者から企業へ提供された情報については、会社が当該労働者との裁判などのトラブルにおいて利用しても構わないという位置づけになります。
しかし、パワハラ対策法等は、当該労働者のプライバシー保護を求めていますので、当該労働者からの相談内容や通報内容の取扱いに当たっては、企業は利用していいいがその情報に触れる人員を限定するなどプライバシー保護を図る必要があるといえます。
また、パワハラ対策法等は、当該労働者が相談や通報をしたことを理由とする不利益取り扱いを禁止しています。そのため一見すると当該労働者から提供された情報を当該労働者の不利益に利用することが禁止されていると勘違いをしそうになるのですが、それは違うと考えています。つまり、あくまでもパワハラ対策法等は、「相談や通報をしたこと」を理由とする不利益取り扱いを禁止しているのみであって、そこで提供された情報をどのように使うかまでは言及していませんので、当該労働者から提供された情報を当該労働者の不利益に利用することもできるのです。
最後に、当該相談者と企業との利益相反という問題ですが、これはハラスメント対策として設置する窓口の目的をどのように設定するかという問題になります。ほとんどの企業では想定しがたいところではありますが、当該労働者側の弁護士として当該労働者のために相談に応じて企業に不利益な助言までする徹底した労働者のための相談窓口とするのであれば、利益相反になるといえます。一方であくまでも法令の趣旨に従った対応をするための、会社の一機関としての外部窓口ということであれば、理屈上はその窓口担当の弁護士は会社の代理人として当該労働者から事実確認をするということになりますので、そもそも当該弁護士は会社の代理人であり、その後の紛争において企業を代理して当該労働者を相手に訴訟等の対応をしても法律上の問題はないといえます。ただし、労働者に誤解を与えないように、
したがって、パワハラ防止法等の趣旨目的に沿って、顧問弁護士に社外窓口を外部委託するということも可能だと言えます。
もっとも、顧問弁護士とは別に、ハラスメント相談や公益通報(コンプライアンス違反の通報)の窓口を設ける方が、望ましいといえます。
というのも、結局は、弁護士の意識としては対応しずらいということに変わりがないからです。また、労働者からの見え方としても、顧問弁護士とは別に弁護士を社外窓口としている方がより通報を容易にしてその窓口設置の効果が見込めるといえます。そのため、多少の費用がかかっても外部窓口としてのみ依頼をされる企業は多数いらっしゃいます。
なお、弁護士法人いかり法律事務所が提供するアンカーラインというハラスメント・公益通報社外窓口サービスは、顧問弁護士がいる企業でも外部委託しやすい料金設定をしています。
加えて、企業は、その業務内容に応じて、顧問弁護士との契約をしていることがほとんどだと思います。例えば、病院であれば医療問題や患者対応の相談などをメインとして顧問弁護士を選んでいたり、不動産業者であれば不動産取引の相談や明渡対応を弁護士に依頼していたりします。
その顧問弁護士がハラスメント問題に精通しているとは限らないということです。ここ近年は多少なりと弁護士業界においても専門性が重視されてきていますが、既存の顧問弁護士が適切に対応できないということもあります。そのため、顧問弁護士とは別に労働分野の中でもハラスメント相談窓口対応から調査などまで可能な別の精通した弁護士に依頼するメリットがあります。
弊所は、上記のとおり、ハラスメント対策・ハラスメント相談窓口について真剣に考えて、取り組んでいます。是非、一度お問い合わせください。
弁護士・法律事務所に社外窓口を外部委託するメリット
弁護士、法律事務所へ、ハラスメント相談窓口を外部委託するメリットは、多数あります。
ハラスメント対策として窓口設置を対外的にアピールできる
まず、わかりやすい最大ともいえるメリットは、企業のWEB・HPなどで、対外的に「社外窓口 弁護士法人●●法律事務所」と発表できることです。
民間企業ではない弁護士に外部委託をしたということで、コンプライアンスを徹底しようという姿勢を対外的にアピールできます。
迅速かつ正確な確認及び適正な対処が可能になる。
弁護士法人、法律事務所を社外窓口とすることで、かつ、その弁護士から相談・通報内容に応じた助言が得られるとすれば、わざわざ顧問弁護士に相談をする必要性がなくなります。
また、顧問弁護士が労働問題・ハラスメント対応に精通しているとは限らず、かつ、顧問弁護士が受けてくれないこともあります。
労働問題・ハラスメント相談窓口運用に精通した弁護士法人に依頼をすることで、迅速かつ正確な事実関係の確認及び適正な対処に関する助言指導を得られることになります。
ハラスメント対策ガイドラインの要請を充足する
ハラスメント対策ガイドラインは、「事業主は、職場におけるパワーハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、次の措置を講じなければならない」として、
①相談に応じて適切に対応するための必要な体制の整備として相談対応のための窓口を設置し適切に対応できるようにすること、
②職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応として事実関係を迅速かつ正確に把握すること・被害者へ配慮のための措置・行為者に対する措置
などを要請しています。
これらを企業のみで完結させることは難しく、弁護士などの専門家の助言・指導が不可欠となります。
弁護士法人・法律事務所を外部窓口としておくことで、ハラスメント対策として必要でかつ企業では対応が難しい部分を補完し充足することができます。
民間企業ではなく弁護士法人に依頼するメリット
専門家である弁護士による指導助言が得られる
顧問弁護士への相談をしなくて済む
迅速かつ適切な対応が可能となる
損害賠償請求などのリスク軽減ができる
グループ会社の相談窓口設置
グループ会社で、統一的なハラスメント相談窓口/公益通報窓口を設置する際の留意点などをご紹介します。
グループ全体でハラスメント対策の相談窓口/公益通報窓口窓口を設ける意義
企業の成り立ち、グループ化するに至った経緯・理由は、各企業により異なるところだと思いますが、コンプライアンス体制の整備など法令上要求されているところについては、各社それぞれ対応するよりグループ会社全体で取り組む方が効率的であり、かつ、グループガバナンスとしても相応しいところだといえます。
また、グループ会社がそれぞれハラスメント対策として外部窓口を設けようとすると区々な対応となってしまい、品質の統一化もできず、統制が取れなくなるといえます。
したがって、法令への対応のための業務の効率化、コンプライアンス・ガバナンスの徹底という観点から、グループ全体で統一的なハラスメント相談窓口/公益通報窓口を設ける意義があるといえます。
グループ会社でハラスメント相談窓口を設置する際の留意点
これを検討するにあたっては、最高裁の判断を参考にするのがふさわしいといえます。
最高裁のハラスメント相談窓口/公益通報窓口に関する事例
グループ法令遵守体制と子会社従業員に対する責任に関する判決(最高裁判所第一小法廷平成30年2月15日判決)では、親会社が、自社及び子会社等のグループ会社における法令遵守体制を整備し、法令等の遵守に関する相談窓口を設け、現に相談への対応を行っていた場合において、親会社が子会社の従業員による相談の申し出の際に求められた対応をしなかったことを理由として、信義則上の義務違反が認められる可能性が示唆されています。なお、結論としては義務違反は否定されています。詳細は、別途。
最高裁の判断を踏まえたハラスメント対策としての窓口設置
各子会社で窓口を設ける方法
上記最高裁の判断を前提とすると、親会社は、グループ会社で相談窓口を設けると、子会社のハラスメントなどの労働問題について責任を問われる可能性があるということになります。親会社として本来負うべきではない子会社の労務問題に関する責任を問われることを避けたいといのも実情です。そうすると、グループ会社で統一したハラスメント等の窓口を設けずに、各子会社で窓口を設けて対応をさせるのが適当ということになりです。
各子会社で窓口を設けて、親会社は少なくとも直接は子会社従業員の通報への対応をしないことを明らかにするなど工夫が必要となります。
グループ会社で統一窓口を設ける場合
しかしながら、グループガバナンスの観点から、親会社は子会社・取引先等の関係会社を管理し、グループ内通報制度に関する統一的な制度設計をすることが求められると言われていますし、上記のとおり、グループで一括窓口を設ける意義もあります。
そうすると、親会社として責任が発生する可能性はあるものの、グループ全体で1つの窓口を設ける(又は子会社の通報も受け付ける親会社窓口を設け(グループ内通報制度))ことが考えられます。
親会社としてリスク回避をするためには、通報窓口は親会社に設けるものの、その後の対応については子会社がするという仕組みを作って、その仕組みの下に親会社として適切に対応をするという方法が考えられます。
ハラスメント相談・公益通報の内容の共有をする際の注意
グループ会社といっても法律上は別法人となりますので、グループ内で情報共有することについて通報者の明示的な同意を得ておくべきということになります。
弁護士法人いかり法律事務所が提供するハラスメント・公益通報社外窓口サービス「アンカーライン」では、最低料金1社16,500円(WEBフォーム)からサービス提供をしています。なお、業種、従業員数などを目安にお見積りをさせて頂きますが、
子会社など関連会社をまとめて外部委託される場合は、2社以降は半額で受託しています。また、グループ会社数が多数に上る場合は、依頼する会社の数、各社の人員などを目安に、お見積りをさせて頂きます。
ハラスメント相談窓口の導入相談は無料でしていますし、見積もりも出させていただきますので、遠慮なくお問い合わせください。
費用・料金(グループ会社で外部委託する)
グループ会社で一括窓口を設ける場合は、会社数及び従業員数を基準として、2社目以降は通常料金の半額以下を目安にお見積りをさせて頂きます。
一般企業ではない弁護士法人のハラスメント相談窓口としてはかなりリーズナブルなご提案ができると思っています。
お問い合わせフォーム
是非、お気軽に問合せ下さい。
※取得した情報の利用目的:お問い合わせの回答などハラスメント相談窓口のサービスのご案内のみとします。
ハラスメント相談窓口の設置費用の相場
会社内に窓口を設けていつでも電話で受け付けるという体制を取るには、電話回線の増設や人の配置が必要になることから、毎月20〜30万円くらいのコストがかかると思います。
またハラスメント相談窓口の担当者の研修や指導、フォローが必要になりますので、さらに費用・コストが大きくなります。
そこで、ハラスメント相談窓口の社外設置、外部委託、代行への依頼を検討する企業もいますが、気になるのはその費用だと思います。
私がWEBで調べたり、周りの弁護士への費用感を聞き取ったたりしたことをご説明します。
一般企業が運営するハラスメント相談窓口の設置費用
一般の民間企業に委託した場合、コストは月額数万円から数十万円といったところのようです。弁護士や産業医との連携や多言語対応などそれぞれ特色があるようで魅力的です。ただ、聴取は専門家ではない受付対応になりますし、専門家である弁護士とは連携・紹介にとどまり直ちにフォローできる体制はないようです。
また、あくまで感想レベルの話ですが、ハラスメント相談窓口の運用を主体として利益を上げようとしていることから費用が高くなりがちなのではないかと思っています。
ただ一方で年間の運営額が2万円程度で、電話1本5000円程度というところもありました。会社の体制がかなり整っていて電話受付だけしてもらえればいいということであればありなのではないかと思いました。それならコールセンターでもいいのではないかとも思います。しかし、各企業が努力をしているところだと思いまが、コールセンターの電話対応で聴き取りが十分できるのか、ハラスメント対策としての実効性がどうなのかなぁと思います。その後の対応策は会社内の人事労務担当者が考えなければなりませんが、法律上問題のない適切な対応をしようとすると負担が大きくなります。
ちなみに、そのためハラスメント相談窓口の運営を検討している企業から、弁護士法人いかり法律事務所に連携の打診を受けたこともあります。当該企業からは紹介料の支払を求められたのですが、弁護士法上依頼者の紹介を受けたこと対価として紹介料を支払うことは禁止されていることから、残念ながら連携が実現しませんでした。
社会保険労務士事務所をハラスメント相談窓口とする場合の費用の相場
専門家である社会保険労務士の方が運営するハラスメント相談窓口は、弁護士事務所の持ち合わせる専門性と近いものがあります。費用面でも抑えられていることも多く、これも魅力的です。
ただ一つ気になる点もあります。それは、ハラスメント相談窓口への相談・通報は、既に紛争になる可能性を帯びていて、裁判での見通しなどを前提とした対応が要求されるのですが、社会保険労務士は基本的に裁判を専門とはしていません。
弁護士事務所・法律事務所でハラスメント相談窓口を設置する場合の費用の相場
一般的な弁護士、法律事務所の場合、企業規模によるとは思いますが、3-20万円程度になることが多いのではないかと思います。
中小企業1社で100名程度であれば、ほとんどが5万円程度で依頼をすることができると思います。ハラスメントなど労働問題に精通していて、複数の弁護士が在席していて電話受付をできる体制があるところがよいのではないかと思います。
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東京都からハラスメント窓口を東京以外の弁護士に外部委託するメリット
東京都のハラスメント相談・労働トラブル発生状況
東京都の労働相談情報センターで受け付けている相談内容としては、ハラスメント・パワハラの問題である「職場の嫌がらせ」が2位となっており上位となっています。
東京都では、都内6か所に設置した労働相談情報センターで、労使や都民の皆様から、常時、労働問題全般についての相談を受けております。
東京都産業労働局WEBよりhttps://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/soudan/
・・・令和2年度の労働相談件数は、52,318件となり、前年度より566件(△1.1%)減少しました。平成18年度以降、5万件を超える状況となっています。…相談内容では、最多項目が「退職」(8,241項目)となり、以下、「職場の嫌がらせ」7,851項目、「労働契約」7,566項目、「休業」7,008項目、「解雇」5,717項目が上位5項目となっています。
・・・令和元年度の労働相談件数は、52,884件となり、前年度より2,747件(5.5%)増加しました。平成18年度以降、5万件を超える状況となっています。…相談内容では、「退職」(10,101項目)が最多となり、以下、「職場の嫌がらせ」9,572項目、「労働契約」7,692項目、「解雇」6,025項目、「賃金不払」4,932項目が上位5項目となっています。
全国的なハラスメント問題の相談窓口受付傾向
全国的に見てもハラスメント相談の受付件数が増大傾向にあることが分かります。
東京都の企業がハラスメント相談窓口・公益通報窓口を東京都以外の弁護士に外部委託・代行に委託するメリット
東京都以外に所在する法律事務所・弁護士法人へハラスメント相談窓口の代行・外部委託をするメリットは、労働者が心理的に通報をし易くなるという点です。
ハラスメント相談窓口・公益通報社外窓口は、企業からの依頼で運用するものではあるものの、あくまでも法令に従って公正に対応をすることになります。そして、労働者としてもそれを期待していますが、例えば顧問弁護士だったり、同一県内の法律事務所だったりすると心理的な抵抗感を抱く可能性がないとはいえません。
また、企業の所在地の近くの弁護士法人・法律事務所である必要性が低いといえます。なぜなら、ハラスメント相談窓口・公益通報社外窓口は、窓口としての機能に特化した場合には所在は関係がないといえます。また、弁護士から助言指導を受けるにあたっては、メールなどの手段の方が確実ともいえますし、必要があればWEB会議をすることで面談と同一の効果があげられるからです。
むしろ、上記のとおり、企業との関係性が薄い方が労働者の通報や相談を容易にでき、かつ、弁護士法人であれば冷静かつ公正な助言指導が可能となるといえ、結果的に大きなリスクの回避ができ、企業の健全経営につながるといえます。
このように、東京都所在の企業であれば、なおのこと福岡県所在の法律事務所に依頼するメリットがあるといえます。
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ハラスメント相談窓口の運用フロー・流れ
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ハラスメント対策の就業規則・規程例
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ハラスメント対策 トップメッセージ
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ハラスメント対応 配置転換・懲戒処分など(事後の適切な対応)
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ハラスメント対策・パワハラ対策のポイント
ハラスメント対策のポイントは、ハラスメントとは何かを知って、法律上の要請(厚生労働省の指針)に沿った対応をすることです。
弊所の専門サイトでは、ハラスメント対策の指針を見やすく整理をしていますので、ご参照ください。
ハラスメントとは?種類と対応策
ハラスメントとは
セクシャルハラスメント
セクシュアルハラスメント(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)に規定する「職場におけるセクシュアルハラスメント」をいう。以下同じ。)
マタニティハラスメント
妊娠、出産等に関するハラスメント( 事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号) に規定する「職場における妊娠、出産等に関するハラスメント」をいう。)
育児休業等に関するハラスメント
育児休業等に関するハラスメント( 子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針( 平成21年厚生労働省告示第509号) に規定する「職場における育児休業等に関するハラスメント」をいう。)
パワーハラスメント
業種別 パワハラ・ハラスメント対策・窓口対応
準備中。各業種別にパワーハラスメントの認定が異なることなどから別途ご案内します。
学校法人・教育関係・大学・高校・小学校・幼稚園
医療・福祉/医療法人・病院
工場 製造業・食品加工業
運送業・配送業
建設業・建築関係
消防・警察
IT・WEB・マスコミ
パワハラ対策指針・ガイドラインのポイント
パワハラ対策指針・ガイドラインが厚生労働省より公表されています。
→「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)
しかし、一般的には内容を読み込むのはとても大変です。そこで、ポイントだけを整理した記事を作成していますので、こちらをご覧ください。
→ パワハラ対策指針・ガイドラインのポイント
パワーハラスメント・パワハラとは?
この記事では、パワハラ対策対策の前提として理解をしておくべき、パワーハラスメントとは何かについて、厚生労働省のパワハラ対策指針・ガイドラインをベースに詳細に解説します。
パワーハラスメント・パワハラの定義
職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう とされています。
「職場」とは?
「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる。
「労働者」とは?
「労働者」とは、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいう。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者についても、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律( 昭和60 年法律第88号) 第47条の4の規定により、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、法第30条の2第1項及び第30条の3第2項の規定が適用されることから、労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者についてもその雇用する労働者と同様に、3(1)の配慮及び4の措置を講ずることが必要である。
なお、法第30条の2第2項、第30条の5第2項及び第30条の6第2項の労働者に対する不利益な取扱いの禁止については、派遣労働者も対象に含まれるものであり、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該者に派遣労働者が職場におけるパワーハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒む等、当該派遣労働者に対する不利益な取扱いを行ってはならない。
「優越的な関係を背景とした」言動とは?
「優越的な関係を背景とした」言動とは、当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指し、例えば、以下のもの等が含まれる。
<具体例>
⑴職務上の地位が上位の者による言動
⑵同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
⑶同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
→このように上司部下の関係においてのみ当てはまるものではなく、同僚や部下からのパワハラということもあり得ますので、注意が必要です。
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは?
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指し、例えば、以下のもの等が含まれる。
<具体例>
⑴業務上明らかに必要性のない言動
⑵業務の目的を大きく逸脱した言動
⑶業務を遂行するための手段として不適当な言動
⑷当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
<判断基準・判断要素>
この判断に当たっては、様々な要素( 当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等) を総合的に考慮することが適当である。
また、その際には、個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要である。
<注意点>
この要件の該当性判断は、難しいところがあり、業種などによって変わってくるところです。
客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しないので、パワハラにならないように意識をしつつも、必要な業務上の指導は、相当な範囲で行うようにする必要があるといえます。
「労働者の就業環境が害される」とは?
「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す。
<判断基準>
この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当である。
まとめ
職場におけるパワーハラスメントは、上記パワーハラスメントの定義の①から③までの要素を全て満たすものをいいます。一方で、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
個別の事案についてその該当性を判断するに当たっては、業務上の必要性・相当性の要件該当性の判断において、総合的に考慮することとした事項のほか、当該言動により労働者が受ける身体的又は 精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要である。
このため、個別の事案の判断に際しては、相談窓口の担当者等がこうした事項に十分留意し、相談を行った労働者( 以下「相談者」という。)の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、相談者及び行為者の双方から丁寧に事実確認等を行うことも重要である。
これらのことを十分踏まえて、予防から再発防止に至る一連の措置を適切に講じることが必要である。
パワハラ・パワーハラスメントの具体的事例
職場におけるパワーハラスメントの状況は多様ですが、代表的な言動の類型としては、以下 のイからヘまでのものがあり、当該言動の類型ごとに、典型的に職場におけるパワーハラスメントに該当し、又は該当しないと考えられる例としては、次のようなものがあります。
ただし、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、また、次の例は限定列挙ではないことに十分留意し、以下の<相談に応じ適切に対応するための体制の整備>にあるとおり広く相談に対応するなど、適切な対応を行うようにすることが必要です。
なお、職場におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる以下の例については、行為者と当該言動を受ける労働者の関係性を個別に記載していませんが、(4)にあるとおり、優越的な関係 を背景として行われたものであることが前提である。
イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)
(イ) 該当すると考えられる例
殴打、足蹴りを行うこと。
相手に物を投げつけること。
(ロ) 該当しないと考えられる例
誤ってぶつかること。
ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(イ) 該当すると考えられる例
①人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
②業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
③他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
④相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。
(ロ) 該当しないと考えられる例
①遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。
②その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。
ハ 人間関係からの切り離し( 隔離・仲間外し・無視)
(イ) 該当すると考えられる例
①自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
②一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。
(ロ) 該当しないと考えられる例
①新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。
②懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。
ニ 過大な要求( 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
(イ) 該当すると考えられる例
①長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
②新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
③労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
(ロ) 該当しないと考えられる例
①労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。
②業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。
ホ 過小な要求( 業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(イ) 該当すると考えられる例
①管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
②気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
(ロ) 該当しないと考えられる例
労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。
ヘ 個の侵害( 私的なことに過度に立ち入ること)
(イ) 該当すると考えられる例
①労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
②労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
(ロ) 該当しないと考えられる例
①労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
②労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。
この点、プライバシー保護の観点から、ヘ(イ)②のように機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要である。
パワハラ・パワーハラスメントの具体例のまとめ
パワーハラスメントに該当するかどうかは、パワハラの定義に該当するかどうかを検討することになりますが、それだけではなかなか判断が難しいといえます。そのため、パワーハラスメントの代表的事例については理解をした上で、具体的事例においてパワハラに該当するかどうかを判断していく必要があります。
<パワハラ典型例のまとめ>
イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)
ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
ハ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
二 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
パワハラ対策・法律上の義務として執るべき対策
ここでは、パワハラ対策として、法律上要請されていて、事業主から見ると義務になるものをピックアップしてご紹介します。
法的責任をご説明した上で、
⑴事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
⑵相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
⑶職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑷相談者・行為者等のプライバシー保護、解雇その他不利益な取り扱いをされない旨の定めと周知
について、厚生労働省のパワハラ対策指針を踏まえた解説をします。
事業主は、当該事業主が雇用する労働者又は当該事業主( その者が法人である場合にあっては、その役員) が行う職場におけるパワーハラスメントを防止するため、雇用管理上このような措置を講じなければならないとされています。
はじめに
事業主の法的責任(事業主の責務)
いわゆるパワハラ防止法第30条の3第2項の規定により、事業主は、職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないことその他職場におけるパワーハラスメントに起因する問題( 以下「パワーハラスメント問題」という。) に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者( 他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。(2)において同じ。) に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる同条第1項の広報活動、啓発活動その他の措置に協力するように努めなければならない。
なお、職場におけるパワーハラスメントに起因する問題としては、例えば、労働者の意欲の低下などによる職場環境の悪化や職場全体の生産性の低下、労働者の健康状態の悪化、休職や退職などにつながり得ること、これらに伴う経営的な損失等が考えられる。
また、事業主( その者が法人である場合にあっては、その役員) は、自らも、パワーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、労働者( 他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。) に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
労働者の法的責任(労働者の責務)
法第30条の3第4項の規定により、労働者は、パワーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずるパワハラ対策措置に協力するように努めなければならない。
⑴事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
事業主は、職場におけるパワーハラスメントに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じなければならない。
なお、周知・啓発をするに当たっては、職場におけるパワーハラスメントの防止の効果を高めるため、その発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが重要である。
その際、職場におけるパワーハラスメントの発生の原因や背景には、労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題もあると考えられる。
そのため、これらを幅広く解消していくことが職場におけるパワーハラスメントの防止の効果を高める上で重要であることに留意することが必要である。
イ 職場におけるパワーハラスメントの内容及び職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。(事業主の方針等を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例)
- 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、当該規定と併せて、職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景を労働者に周知・啓発すること。
- 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を記載し、配布等すること。
- 職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。
ロ 職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。(対処方針を定め、労働者に周知・啓発していると認められる例)
- 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
- 職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること。
⑵相談( 苦情を含む。以下同じ。) に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければならない。
イ 相談への対応のための窓口( 以下「相談窓口」という。) をあらかじめ定め、労働者に周知すること。(相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例)
- 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
- 相談に対応するための制度を設けること。
- 外部の機関に相談への対応を委託すること。
ロ イの相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、被害を受けた労働者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。例えば、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合や、労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題が原因や背景となってパワーハラスメントが生じるおそれがある場合等が考えられる。(相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例)
- 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
- 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
- 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。
⑶職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
事業主は、職場におけるパワーハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、次の措置を講じなければならないとされています。
イ 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。(事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例)
- 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。
また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分 にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。 - 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、法第30 条の6に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。
ロ イにより、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害を受けた労働者( 以下「被害者」という。) に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
(措置を適正に行っていると認められる例)
①事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。
②法第30条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。
ハ イにより、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。
(措置を適正に行っていると認められる例)
①就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるパワーハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること。
②法第30条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。
ニ 改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。
なお、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
(再発防止に向けた措置を講じていると認められる例)
①職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針及び職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。
②労働者に対して職場におけるパワーハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。
⑷ 相談者・行為者等のプライバシー保護、解雇その他不利益な取り扱いをされない旨の定めと周知(⑴から⑶と併せて講ずべき措置)
(1)から(3)までの措置を講ずるに際しては、併せて次の措置を講じなければならないとされています。ポイントは、太字やマーカーをしている部分です。
イ 職場におけるパワーハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該パワーハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。
なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれるものであること。(相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていると認められる例)
- 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。
- 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。
- 相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。
ロ 法第30条の2第2項、第30条の5第2項及び第30条の6第2項の規定を踏まえ、労働者が職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたこと( 以下「パワーハラスメントの相談等」という。) を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。(不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者にその周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例)
- 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすること。
- 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること。
パワハラ対策として望ましい取り組み(義務ではないがやるべきこと)
ここでご紹介する内容は、パワハラ防止法及びそれを受けて作成されたパワハラ対策ガイドラインにおいては、「望ましい取り組み」とされており、法律上の義務とまでは記載されていません。
しかしながら、裁判所から見たときには、事案によって、雇用契約上の安全配慮義務の内容となるとの判断がされる可能性はありますので、積極的なパワハラ対策への取り組みが必要です。
事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組の内容
厚生労働省のパワハラ対策指針では、事業主は、当該事業主が雇用する労働者又は当該事業主( その者が法人である場合にあっては、その役員) が行う職場におけるパワーハラスメントを防止するため、義務とされる措置に加え、次の取組を行うことが望ましいとされています。
(1) 職場におけるパワーハラスメントは、セクシュアルハラスメント、妊娠、出産等に関するハラスメント、育児休業等に関するハラスメントその他のハラスメントと複合的に生じることも想定されることから、事業主は、例えば、セクシュアルハラスメント等の相談窓口と一体的に、職場におけるパワーハラスメントの相談窓口を設置し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましい。
( 一元的に相談に応じることのできる体制の例)
①相談窓口で受け付けることのできる相談として、職場におけるパワーハラスメントのみならず、セクシュアルハラスメント等も明示すること。
②職場におけるパワーハラスメントの相談窓口がセクシュアルハラスメント等の相談窓口を兼ねること。
(2) 事業主は、職場におけるパワーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、次の取組を行うことが望ましい。
なお、取組を行うに当たっては、次の2点について留意することが必要です。
①労働者個人のコミュニケーション能力の向上を図ることは、職場におけるパワーハラスメントの行為者・被害者の双方になることを防止する上で重要であることや、
②業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当せず、労働者が、こうした適正な業務指示や指導を踏まえて真摯に業務を遂行する意識を持つことも重要であること
イ コミュニケーションの活性化や円滑化のために研修等の必要な取組を行うこと。
(コミュニケーションの活性化や円滑化のために必要な取組例)
①日常的なコミュニケーションを取るよう努めることや定期的に面談やミーティングを行うことにより、風通しの良い職場環境や互いに助け合える労働者同士の信頼関係を築き、コミュニケーションの活性化を図ること。
②感情をコントロールする手法についての研修、コミュニケーションスキルアップについての研修、マネジメントや指導についての研修等の実施や資料の配布等により、労働者が感情をコントロールする能力やコミュニケーションを円滑に進める能力等の向上を図ること。
ロ 適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組を行うこと。
(職場環境の改善のための取組例)
適正な業務目標の設定や適正な業務体制の整備、業務の効率化による過剰な長時間労働の是正等を通じて、労働者に過度に肉体的・精神的負荷を強いる職場環境や組織風土を改善すること。
(3) 事業主は、義務となる措置を講じる際に、必要に応じて、労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めることが重要である。
なお、労働者や労働組合等の参画を得る方法として、例えば、労働安全衛生法( 昭和47年法律第57号) 第18条第1項に規定する衛生委員会の活用なども考えられる。
業務委託先や研修生への配慮と対応(事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組の内容)
3の事業主及び労働者の責務の趣旨に鑑みれば、事業主は、当該事業主が雇用する労働者が、他の労働者( 他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。)のみならず、個人事業主、インターンシップを行っている者等の労働者以外の者に対する言動についても必要な注意を払うよう配慮するとともに、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員) 自らと労働者も、労働者以外の者に対する言動について必要な注意を払うよう努めることが望ましい。
こうした責務の趣旨も踏まえ、事業主は、4(1)イの職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、当該事業主が雇用する労働者以外の者( 他の事業主が雇用する労働者、就職活動中の学生等の求職者及び労働者以外の者) に対する言動についても、同様の方針を併せて示すことが望ましい。
また、これらの者から職場におけるパワーハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、義務とされた措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい。
顧客や取引先からのパワハラへの対応(事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容)
事業主は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主( その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為( 暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等) により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮として、例えば、(1)及び(2)の取組を行うことが望ましい。また、(3)のような取組を行うことも、その雇用する労働者が被害を受けることを防止する上で有効と考えられる。
⑴相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関する労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、労働者間での対応の例も参考にしつつ、次の取組を行うことが望ましい。
また、併せて、労働者が当該相談をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを行っ てはならない旨を定め、労働者に周知・啓発することが望ましい。
イ 相談先( 上司、職場内の担当者等) をあらかじめ定め、これを労働者に周知すること。
ロ イの相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
⑵被害者への配慮のための取組
事業主は、相談者から事実関係を確認し、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為が認められた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための取組を行うことが望ましい。(被害者への配慮のための取組例)事案の内容や状況に応じ、被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に一人で対応させない等の取組を行うこと。
⑶他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組
(1)及び(2)の取組のほか、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等か らの著しい迷惑行為からその雇用する労働者が被害を受けることを防止する上では、事業主が、こうした行為への対応に関するマニュアルの作成や研修の実施等の取組を行うことも有効と考えられる。
また、業種・業態等によりその被害の実態や必要な対応も異なると考えられることから、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めることも、被害の防止に当たっては効果的と考えられる。