労働問題

福岡の弁護士による裁判事件の紹介 バックペイと中間収入 第二鳩タクシー事件 最高裁昭和52年2月23日大法廷判決【106】

労働問題

【読むポイントここだけ】
 この判例は,他に就職して収入を得た場合には,それが従前の就労からの解放によって可能となった労働力の使用の対価であると認められる限り,解雇による経済上の不利益はその限度において償われたものと考えられ,バックペイとしてその既に償われた部分までの支払いを命ずることは,実害の回復以上のものを使用者に要求するものとして救済の範囲を逸脱すると判断しました。

【事案の概要】
(1)  X社は,ハイヤー・タクシー業を営む株式会社であり,Aらはいずれも自動車運転手としてX社に雇われ勤務していた。AらはB労働組合に加入したところ,X社は,Aらを解雇した。
(2)  解雇後,Aらは,継続的又は断続的に,他のタクシー会社に運転手として雇われ,賃金収入を得ていた。
(3)  Aらは,B労働組合とともに,X社を被申立人としてY労働委員会に対し,救済の申立てをした。Yは,Aらを原職に復帰させ,解雇された日から原職に復帰するまでの間に受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならない旨をX社に命じた。
(4)  X社は,Aらが原職に復帰するまで他の会社から賃金を得ていたにもかかわらず,これを控除せずに命令を下されたことから,Yの命令の取消を求めて提訴した。

第一審:請求認容,控訴審:控訴棄却

【判旨 判旨の概要】上告棄却
(1)  労働組合法27条…は,労働者の団結権及び団体行動権の保護を目的とし…労働組合法7条の規定の実効性を担保するために設けられたものであるところ…労働委員会に対し,その裁量により,個々の事案に応じた適切な是正措置を決定し,これを命ずる権限をゆだねる趣旨に出たものと解される。
(2)  救済命令の内容は,被解雇者に対する侵害に基づく個人的被害を救済するという観点からだけではなく,あわせて,組合活動一般に対する侵害の面をも考慮し,このような侵害状態を除去,是正して法の所期する正常な集団的労使関係秩序を回復,確保するとう観点からも,具体的に,決定されなければならないのである。不当労働行為としての解雇に対する救済命令においては,通例,被解雇者の原職復帰とバックペイが命ぜられるのであるが,このような命令は…必要な措置として労働委員会が適法に発し得るところといわなければならない。
(3)  他に就職して収入を得た場合には,それが従前の就労からの解放によって可能となった労働力の使用の対価であると認められる限り,解雇による経済上の不利益はその限度において償われたものと考えられ,バックペイとしてその既に償われた部分までの支払いを命ずることは…実害の回復以上のものを使用者に要求するものとして救済の範囲を逸脱するものと解される。
(4)  組合活動一般に対する侵害の除去という観点から中間収入控除の要否及びその金額を決定するに当たっては…組合活動一般について生じた侵害の程度に応じ合理的に必要かつ適切と認められる救済措置を定めなければならないのである。

【解説・ポイント】
 労働委員会は,中間収入の控除をせずに賃金相当額の全額の支払いを命じることが多いといえます。他方,判例は,被解雇者個人の被害の救済の観点からすれば,中間収入を得た部分について経済的不利益は償われているため控除が原則となるが,個人の被害を超えて組合活動一般への被害がある場合には,その程度に応じて必要かつ適切な救済と認められれば控除は不要であるとして「二元論」の立場から中間収入の控除の要否を決定しています。

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