読むポイントここだけ

この判決は,労働組合法上の労働者該当性は,事業組織への組入れ,契約内容の一方的・定型的決定及び報酬の労務対称性が基本的判断要素であるとしています。

事案の概要

(1)カスタマー・エンジニア(CE)として,修理補修等の業務に従事していた。
(2)CEが加入した労働組合が,会社に対して団体交渉の申し入れを行った。
(3)会社は,CEは労働組合法上の労働者に当たらないとして団体交渉を拒否した。

第一審請求棄却,第二審は第一審を覆して本件救済命令取り消し。

判旨・判決の要約 破棄自判

(1)CEは会社の事業の遂行に不可欠な労働力として,会社の組織に組み入れられていた。また,会社は,業務遂行契約の内容を一方的に決定していた。さらに,CEの報酬は,労務の提供としての性質を有していた
(2)CEは,基本的に会社による個別の修理補修等の依頼に応ずべき関係にあった。また,会社の指揮監督の下に労務の提供を行っており,業務について場所的にも時間的にも一定の拘束を受けていた。さらに,平均的なCEにとって独自の営業活動を行う時間的余裕は乏しかった
(3)以上の諸事情を総合考慮すれば,CEは,会社との関係において労働組合法上の労働者にあたる。

関連裁判例

最高裁判決平成23年4月12日(新国立劇場運営財団事件)
この判決は,本判決と同期日に行われ,労働組合法上の労働者性が争点となり,本判決と同様,労働者性を肯定しました。

解説・ポイント

(1)労働組合法上の労働者該当性は,上述した基本的判断要素のほか,業務の依頼に応ずべき関係,会社による指揮監督下の労務提供及び時間的場所的拘束性を補充的判断要素としています。なお,顕著な事業者性は,労働者性を消極的に判断する要素とされます。
(2)本件の事案のように,労働組合法上の労働者に当たるにもかかわらず,労働組合からの団体交渉を拒否すると,不当労働行為として違法になる場合があります。