【読むポイントここだけ】
この判決は,求人広告は労働契約締結の申込みではなく,申込みの誘因行為に過ぎないとして,求人広告が直ちに労働契約の内容になるわけではないと判断しました。

【事案の概要】
(1)求人広告には,「…89年卒の方なら,89年に当社に入社した社員の現時点での給与と同等の額をお約束いたします」等の記載があった。
(2)81年卒の者が,この求人広告を見て入社した。
(3)入社後1年余を過ぎたところで,賃金の格付けが新卒同年次定期採用者の下限に位置付けられたものであることを知った。
(4)新卒同年次定期採用者の「平均的格付」による給与との差額賃金の支払い請求及び不当な取り扱いをしたことに対する慰謝料請求を行った。

第一審は労働者の請求を棄却した。

【判旨 判決の要約】一部認容,一部棄却
(1)求人広告は,それをもって個別的な雇用契約の申込みの意思表示と見ることはできない。
(2)第一次面接及び会社説明会において,給与の具体的な額又は格付を確定するに足りる明確な意思表示があったものと認めることはできない。
(3)しかし,会社は,求人広告並びに面接及び社内説明会における説明において,給与条件につき,応募者をして新卒同年次定期採用者の平均的供与と同等の給与待遇を受けることができるものと信じさせかねない説明を行った。
(4)会社の説明は,雇用契約締結に至る過程における信義誠実の原則に反するものであって,これに基づいて精神的損害を被るに至った者に対する不法行為を構成する。

【解説・ポイント】
本件のような不明確な説明をして契約内容に誤解を招いたようなケースだけではなく,使用(求人)者が求職者と労働契約を締結し,または,契約締結の交渉をしていながら,使用(求人)者の信義則に反する行為によって,労働契約が継続されなくなった,または,契約締結されなかったようなケースにも不法行為が成立する場合があります。

昨今,この裁判例と同様に,求人広告の内容と実際の雇用契約の内容が異なるとして,トラブルを抱える件数が増加しています。雇用契約締結後に話が違うと思っても生活があるため,労働者は直ちに退職するわけにはいきません。どのように振舞うべきか,自分だけで判断せず,労基署や弁護士など法律の専門家に一度相談してみることが必要でしょう。