【読むポイントここだけ】
この判決は,就業規則の不利益変更について,合意が認定できる場合には,合理性が否定され反対労働者には不利益変更の効力が及ばないとしても,合意した労働者との関係では不利益変更の拘束力が生じるとしました。
 
【事案の概要】
(1)勤務していた信用組合は吸収合併され,退職金額計算の基礎となる支給基準が不利益に変更された。
(2)支給基準の変更について,吸収された信用組合の職員に説明があり,職員は示された同意書に署名押印した。
(3)その後,新たに3つの信用協同組合と合併し,退職金額計算の基礎となる支給基準が不利益に変更され,合併前の在職期間に係る退職金額は0円となった。
(4)行員は,合併前の支給基準に基づく退職金を請求し訴えを提起した。

第一審及び控訴審ともに職員の請求を棄却

【判旨 判決の要約】破棄差戻し
(1)本件支給基準の変更による不利益の内容等及び本件同意書への署名押印等に至った経緯等を踏まえると,本件支給基準変更への同意をするか否かについて,必要十分な情報を与えられる必要があった。
例えば,自己都合退職の場合には,支給される退職金額が,0円となる可能性が高くなることなど,具体的な不利益や内容や程度についても,情報提供や説明がされる必要があった。
(2)控訴審は,本件基準変更後の退職金額の計算方法の説明や,普通退職を前提とした退職金一覧表の提示などを認定したにとどまる。

【解説・ポイント】
今後,労働条件の変更により具体的に生じる不利益の帰結(例えば,具体的な金額や減額幅など)を,想定される事情を考慮して使用者が可能な限り網羅的に説明し,情報提供を行ったといえるどうかなどが,労働者の同意の有無の認定について重視されることになります。