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この判決は,労働者の年次有給休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり,休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由であると判断しました。

事案の概要

(1) 処分撤回闘争に参加するため,農林省林野庁白石営業署の職員は,2日間の年次有給休暇を請求し,承認を得ないうちに退庁し,両日を出勤しなかった。
(2) 営林署長は,両日の年休請求を不承認とし,同月支給の給与から2日分の賃金を控除した。
(3) 当該職員は,営林署長の不承認の意思表示を無効であるとして,控除分の未払賃金並びに遅延損害金の支払いを求めた。

第一審は請求認容,控訴審は控訴棄却

判旨・判決の要約 上告棄却

(1) 労働基準法39条1項,2項の要件充足により,年次有給休暇の権利は,法律上当然に労働者に生ずる権利であって,労働者の請求をまって始めて生ずるものではない。
(2) 労働者がその有する休暇日数の範囲内で,具体的な休暇の始期と終期を特定して右の時季指定をしたときは,客観的に同条3項但書所定の事由が存在し,かつこれを理由として使用者が時季変更権の行使をしない限り,年次有給休暇が成立し,当該労働日における就労義務が消滅する。
(3) 休暇の時季指定の効果は,使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生するものであって,年次有給休暇の成立要件として,「使用者の承認」の観念を入れる余地はない。
(4) 年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり,休暇をどのように利用するかは,使用者の干渉を許さない労働者の自由である。

解説・ポイント

使用者による時季変更権の行使が可能な場合ですが,労基法39条5項但書の「事業の正常な運営を妨げる場合」とは,当該労働者の所属する事業場を基準として,事業の規模・内容・当該労働者の担当する作業の内容・性質・作業の繁閑・代行者の配置の難易・労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきとされています。
したがって,年次有給休暇を申請した労働者について,このような時季変更権が可能な場合には格別,そうでなければ年次有給休暇として休ませなければなりません。