【ここだけ読むポイント】
この判決は,企業者は,労働者を雇用するにあたり,いかなる者,いかなる条件でこれを雇うかについて,原則として自由にこれを決定することができるとしている。ただし,思想信条等の調査にあたっては,現在の法制度のもとでは,一定の配慮が必要となる(下記注意点参照)。

【事案】
⑴採用面接の際に虚偽の回答,履歴書に虚偽の記載があった。
⑵試用期間満了時に本採用を拒否された。
⑶労働者が雇用契約上の権利確認等を求めて提訴した。
>第1審 本採用拒否は解雇にあたるとして解雇無効
>控訴審 解雇無効の判断を維持

【判旨】破棄差戻
⑴企業者は契約締結の自由を有し,自己の営業のために労働者を雇用するにあたり,いかなるものを雇い入れるか,いかなる条件でこれを雇うかについて,法律その他による特別の制限がない限り,原則として自由にこれを決定することができる。
⑵企業者が特定の思想,信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも,それを当然に違法とすることはできない。
⑶企業者が労働者の採否決定にあたり,労働者の思想,信条を調査し,そのためその者からこれに関連する事項について申告を求めることも,これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない・・・企業の法的に許された行為と解すべきである。

【関連裁判例】
東京高裁判決昭和50年12月22日
思想・信条が採用拒否の直接・決定的な理由となり,かつ,その態様・程度などが社会的に許容される限度を超えると認められる場合にのみ違法性ありとした。

【その他注意点】
・人種,宗教,出身地などは,通常の企業においては,管理職を含めておよそ職業的関連性があるとは考えられず,それらに基づく採用差別が立証された場合には,公序良俗違反による不法行為が成立する余地はある。
・使用者は,労働者の募集・採用について「性別」や「年齢」にかかわりなく均等な機会を与えることを義務付けられている(͡雇均5条,雇対7条)
・障がい者に関して雇い入れの努力義務と一定率以上の雇用義務を負う(障害雇用37条・43条)
・派遣労働者を使用する派遣先には一定の場合に雇入れ努力義務や雇用契約の申込み義務が発生する(労派遣40条の3~40条の5)
・個人情報保護法による利用目的特定等の規制
・「労働者の個人情報保護に関する行動指針」では,使用者は,一定の場合を除き,労働者の人種,民族,社会的身分,門地,本籍,出身地そのほか社会的差別の原因となる恐れのある事項,思想,信条,進行,労働組合への加入・活動に関する個人情報,医療上の個人情報を収集してはならないとしている。