【ここだけ読むポイント】
⑴採用内定は,雇用契約の成立と認められうる。
⑵内定取り消しは解雇と同じく制限される。

【事案】
採用内定通知に同封の誓約書に採用内定取消事由が記載されていた。
他社への応募を辞退した。
突如として採用内定取り消し通知が届いた。
採用内定通知により労働契約が成立し,かつ,内定取り消しは無効であるとして,従業員としての地位確認等を請求する訴えを提起した。

第1審及び第2審ともにXの請求を認容した。

【判旨 判決の要約】上告棄却
⑴採用内定の事実関係に即して採用内定の法的性質を検討する必要がある。
⑵本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかったことを考慮するとき,Y社からの募集(申込の誘因)に対し,Xが応募したのは,労働契約の申込みであり,これに対するY社からの採用内定通知は,右申し込みに対する承諾であって・・・本件誓約書記載の5項目の採用内定取り消し事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解する。
⑶就労の有無という違いはあるが,採用内定者の地位は,一定の試用期間を付して雇用関係に入った者の試用期間中の地位と基本的に異なるところはなく,試用契約における留保解約権の行使に関する最高裁判例の法理が,採用内定期間中の留保解約権行使についても妥当する。

【解説・ポイント】

⑴採用内定は,雇用契約の成立と認められうる。
・採用内定通知があれば直ちに労働契約が成立するということではない。
・「採用内定」の後に特段の意思表示をすることが予定されているか否かで結論が変わりうる。企業としては,採用手続きについて事前に決定し,それを説明・公表をしておくことで紛争を予防することができる。
・その後の裁判例では,新規学卒者のみならず,中途採用者についても本判決と同様の判断がされている(インフォミックス事件・東京地判平成9年10月31日,オプトエレクトロニクス事件・東京地判平成16年6月23日など)。

⑵内定取り消しは解雇と同じく制限される
・労働契約の成立と認められる採用内定の取り消しは,労働契約の解約と捉えられ,使用者が有する一般的な解雇権に基づく内定取り消しは,労働契約法16条(解雇権濫用法理)による制約を受ける。
・採用内定の取り消しは,①取消事由が採用内定当時知ることができず,また知ることが期待できないような事実であり,②それを理由に採用内定を取り消すことが「解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認」できる場合に限り認められる。