【読むポイントここだけ】
この判決は,度重なる電車内での痴漢行為により度々罰金刑に処されており,会社からも昇給停止・降職の処分を受けていたにもかかわらず,再び痴漢行為を行って懲役4月執行猶予3年に処された従業員に対する懲戒解雇を有効と判断しました。
 
【事案の概要】
(1)電鉄会社に勤務していた職員は,電車内で痴漢行為を行った。そのため,電鉄会社は,職員を昇給停止および降職処分にした。
(2)電鉄会社は,痴漢撲滅運動に取り組んでいたところ,職員は,再び痴漢行為を行った。そのため,電鉄会社は,就業規則に基づき職員を懲戒解雇した。
(3)電鉄会社は,職員に対して,退職金を支払わなかった。
(4)懲戒解雇された職員は,退職金の支払い等を求めて提訴した。

第一審は職員の請求を棄却

【判旨 判決の要約】職員の請求を一部認容
本件のように,退職金支給規則に基づき,給与及び勤続年数を基準として,支給条件が明確に規定されている場合には,その退職金は,賃金の後払い的な意味合いが強い。
賃金の後払い的要素の強い退職金について,その退職金全額を不支給とするには,それが当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である。
本件行為が職務外の行為であっても,痴漢撲滅に取り組む電鉄会社にとり,相当の不信行為であることは否定できないのであるから,本来支給されるべき退職金のうち,一定割合での支給が認められるべきである。
 
【解説・ポイント】
本判決は,退職金の不支給について,当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為がある場合にこれを認めています。他方,退職金の減額については,退職金を不支給とするほどの強度の背信性を有するとまでいえない場合であっても,当該不信行為の具体的内容と被解雇者の勤続の功などの個別的事情に応じ,退職金のうち,一定割合を支給すべきものとしています。
このように,本判決は,退職金の不支給と減額について,異なる適法性判断基準を示しています。