【読むポイントここだけ】

 この判決は、労基法上の労働者性の判断要素を示した。主要素として、①業務諾否の自由、②業務遂行における使用者の指示の程度、③時間的・場所的拘束性、④労務提供の代替性、⑤報酬の労務対称性を挙げた。また、補強要素として、⑥事業者性の有無、⑦専属性、⑧社会保険の適用の有無等を挙げた。

【事案の概要】

(1)業務遂行に関する指示は、原則として、運送物品、運送先及び納入時刻に限られていた。
(2)勤務時間、報酬、機械・器具の負担、社会保険の適用の有無など一般の従業員と異なっていた。
(3)業務遂行中、傷害を負った。

第一審は、原告の請求を認容し、控訴審は、被告の控訴を認容した。

【判旨】上告棄却

(1)原告に対する業務遂行上の指示は、運送という業務の性質上当然に必要とされるものである。
(2)原告に対する時間的・場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、原告が被告の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りない。
(3)報酬の支払方法、公租公課の負担等についても、原告が労働基準法上の労働者に該当するといえる事情はない。

【関連裁判例】


最高裁判決平成19年6月28日(藤沢労基署長事件)
使用従属性の判断を厳格に解しつつ、事業者性の要素を強調し、いわゆる一人親方の労働者性を否定した。

【解説・ポイント】

 「事業に使用され、賃金を支払われる者」が労働者であるとする労働基準法9条の文言は簡素であり、ここから個々の役務提供者が「労働者」に該当するか否かの具体的な判断基準を読み取ることは容易ではありません。
 したがって、役務提供者が「労働者」に当たるか否かは、結局のところ、事例ごとに個別に判断される必要があることに注意が必要です。