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この判決は、労働契約上の雇用主でなくとも労働組合法第7条の「使用者」に該当する場合があることを認め、その基準を提示しました。

事案の概要

(1)テレビの放送事業を営む会社の下に、請負会社は、その従業員を継続的に派遣していた。
(2)派遣された従業員は、テレビ放送事業を営む会社の従業員と共に業務に従事し、その指揮監督の下、すべての作業を行っていた。
(3)派遣された従業員が加入していた労働組合が団体交渉を申し入れた。
(4)会社は、派遣された従業員の使用者でないことを理由に団体交渉を拒否した。

第一審請求棄却、第二審は第一審判決を破棄

判旨・判決の要約 原判決破棄、団体交渉について控訴棄却、支配介入について差戻し

(1) 雇用主以外の事業主であっても、自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、同条の「使用者」に当たる
(2) 本件の場合、会社は、派遣された従業員の業務全般を決定していた。また、派遣された従業員は、会社の従業員の指揮監督の下にあった。
(3) 派遣先の会社は、派遣された従業員の労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったといえる。

関連裁判例

東京地判平成23年3月17日(クボタ事件)

派遣先が労働派遣者を直接雇用することを決定したという場合には、近い将来、労働契約関係が成立して雇用主となるのであるから、その後の労働条件に関し、団体交渉に応じるべき「使用者」に当たるとした。

解説・ポイント

一般的に、使用者とは労働契約上の雇用主をいいます。しかし、上述のとおり、雇用主以外の事業者であっても、労働組合法上の「使用者」に当たる場合があります。その場合、雇用主以外の事業主であることを理由に、正当な理由なく団体交渉を拒否すると、不当労働行為として違法になる場合があるため注意が必要です。